山の日レポート
自然がライフワーク
【連載】地域とコラボ!里山再生⑤針葉樹皆伐跡地の広葉樹林化 ―20年の歩みと現在の到達点― (5/7)
2025.01.18
2014年、川内千年の森10haのうち7haで地拵え、植林、下刈り、つる切りに夢中で取り組み10年が経過しましたので、知人に依頼し森林調査を実施しました。これは『森林の保全・公益的機能の増進に関する調査研究―川内千年の森を事例として-川内千年の森 森林調査報告書』(50頁カラー)として印刷されています。
下刈りなど手入れが行き届かない山の状態に、後ろめたい思いでおりましたが、調査者から「良い山になっている」、また「生物多様性に富む森林になりつつある」との評価をもらい,勇気付けられるとともに救われた気持になり嬉しかったです。私たちの力は及ばなくても自然の力はちゃんと森を育てていてくれていたのです。
2024年、前回の森林調査から10年が経過したので、前と同じ調査者に依頼して調査を実施しました。これは『針葉樹伐採跡地の広葉樹林モニタリング 川内千年の森 森林調査報告書』(70頁カラー)として印刷されています。10年前と比べ問題意識がより深まり、題名が明確になりました。
私は2015年から2018年まで文部科学省高等学校森林業に関する3科目「森林科学」「森林経営」「林産物利用」の学習指導要領作成に従事し、2019年から2021年にかけて高等学校農業用教科書「森林科学」を執筆しました。
この6年間は不勉強だった私には、広く深く学ぶ機会となりました。
「森林科学」を執筆した3年間は国民森林会議会長の森林生態学者藤森隆郎氏から毎日のようにメール、電話で相談し助言をいただきました。文科省とは締め切りがありました。2020年のある日、わが家に1本だけあるアンズの木が収穫期を迎えていました。橙色に熟したアンズが1個、また1個と棚田に落ちて、朽ちていくのを横目に見ながら書きました。
藤森隆朗氏から「ストーリーとして森林生態系の機能とサービスを説明しそれらを調和的に発揮させるためにどのように管理していけばよいか、そのためにはどんな技術、森林管理の担い手、政策が必要であるかを示すことが重要である」との助言を受けました。「森林業は人材の育成こそ大事で、学校で良い教育が行われることを願っております」との励ましの言葉をもらいました。教科書では、長伐期、多間伐、択伐林施業といった非皆伐施業の重要性を明確に位置付けることができました。
この間の学習の成果が千年の森活動にも生かされ、最終的な目標林型は天然林とすることにしました。この間取り組んできたことを明確化して「スギヒノキ皆伐跡地の広葉樹林化」と整理しました。川内千年の森10haは広葉樹を植えながら活動していく中で8つのゾーンに分けることになりました。さらに当分の間、目標林型をゾーンごとに設定し、人工林、天然生林、天然林としました。
報告書のおわりに、「積極的な広葉樹の森づくりを主体に展開している森林ボランティアの参考となる広葉樹施業指針はいまだ確立したものがない中で、様々な自然条件の下で試行錯誤による施業を長期的に継続している川内千年の森づくり活動に敬意を表したい」との言葉をいただきました。
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