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応援メッセージ

猪熊隆之 おススメの山 エベレスト(前編)

2024.08.09

山の日アンバサダー
山岳気象予報士
猪熊隆之

応援する側から挑戦する側へ

東京大会の開催、まことにおめでとうございます。「山の日」アンバサダーの猪熊と申します。今回は、今春登ったエベレストについて私の思いを書かせていただきました。ご一読いただければ幸いです。

2024年5月21日午前8時10分、エベレストの山頂に立った。私にとっての今年の大きな目標のひとつであった、「予報をしながらエベレストの山頂に立つ」ことが実現できた瞬間であった。ご存じの通り、エベレストは1953年5月にイギリス隊のエドモンド・ヒラリー氏とシェルパのテンジン・ノルゲイ氏によって初登頂され、2020年には累計登頂者数が9,000人を超えている。公募登山隊の一員として、シェルパや酸素の助けを借りて登っている今回の登山に冒険的な価値はないと思っている。しかし、この登山は私にとってどうしても必要なものであった。

21年前の2003年、32歳のときに西稜からの登頂を目指した。南西壁左の1,000mを超える氷雪壁を喘ぎながら登攀し、西稜上の7,650m付近まで達したが、そこで断念した。

エベレスト西稜、7,600m付近からのチョ・オユー

そのときから、エベレストは自分にとっての宿題のような存在になっていた。また、単純に「世界一高い場所に立ちたい。そこからの眺めはどんなだろう?空の色は、雲はどんな風に見えるだろう?」という好奇心もあった。これまでは、三浦雄一郎さんの世界最高齢でのエベレスト登頂や竹内洋岳さんの8,000m峰14座登頂、日本テレビの人気番組「世界の果てまでイッテQ(以下、イッテQ)」の登山隊などに日本から気象情報を配信し、サポート役に徹していた。予報を出す中で、自分のイメージと現場の天気がズレることがたびたびあった。現場から天気や風などの実況をいただくことで、それを修正し、好条件の日に登頂していただくことができてはいたが、自分の中ではしっくりこないものがあった。「現場で予報をしてみたい。」その気持ちが強くなる中、2019年にアフリカ大陸の最高峰キリマンジャロ(5,895m)に行く。キリマンジャロは気象観測データが少ないことや天気図から天気を予想しづらい熱帯地域にあることから、それまでも予報に苦労していた山であった。キリマンジャロに行くと、雲や風が私に色々なことを教えてくれた。今までもやもやしていたものがひとつの形になった気がした。そして、何より現場の雲や風から空気の状態を理解することがとても楽しく、これがやりたかったことなんだと気づいた。

キリマンジャロで天気について教えてくれた雲

それから2019年のチンボラソ(6,310m)コトパクシ(5,897m いずれもエクアドル)に登頂。2020年にはエベレストに行く予定だったが、新型コロナウィルス(以下、コロナ)の流行で断念。2022年にマッターホルン(4,478m)、2023年秋にマナスル(8,163m)にいずれも天気を予想しながら登頂を果たし、今回のエベレスト登山につながった。そのマナスルでもお世話になった国際山岳ガイドの近藤謙司さんが率いるアドベンチャーガイズの公募登山隊には何度も気象情報を利用していただいていた。その近藤さんの隊で謙司さんと一緒にエベレストの山頂に立ちたいという気持ちも強くなった。

マナスルC3付近からの雲海

今回の登山は決して順調だった訳ではない。トレッキング中には体調を崩し、カトマンズにヘリで下山して3日間入院。それでも近藤さんや現地スタッフのサポート、日本の皆様からの励ましもあって回復し、チームのメンバーとベースキャンプで合流することができた。その後、高所順応を経て山頂を目指す。
(後編につづく)



山の日TOKYO 2024

もうすぐ8月11日「山の日」です。
第8回「山の日」全国大会TOKYO 2024が開催されます。
山の日アンバサダーに、おススメの「東京の山」や「身近な山」をお聞きしました。



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