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山の日レポート

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自然がライフワーク

「TOKYOにも山がある!」第10回 待乳山聖天さまは下町最高峰

2024.02.01

山の日通信員
三輪主彦

第10回(最終回) 待乳山聖天さまは下町最高峰

浅草の観音様の裏手、今戸橋のそばに待乳山の聖天様を祀る社殿がある。
浅草は下町の象徴的な土地で付近に高台はないが、ここ待乳山だけは10mほどの高さを誇っている。
今はビルが立ち並んでおりその威容はわからないが、広重の浮世絵には大川(隅田川)そびえたつ山が描かれている。
下の絵図は広重の描いた浮世絵に似せて私が描いたものだ。

関西には生駒聖天、吉野の聖天など多くの聖天様があるが、江戸の聖天様は待乳山聖天ぐらいで数は少ない。
なぜ少ないかという説明がある。
聖天様(歓喜天)はものすごく怖い神様だがご利益は大変大きいそうだ。
徳川家康は熱心な信者で、大きなご利益を独り占めしようとして、庶民には寄り付かないようにさせたと言われるが、もちろん真偽のほどはわからない。
しかし怖いもの見たさで江戸の庶民に聖天信仰は広まったという。
聖天はご利益も大きいが、逆に間違った信仰すれば祟り神として憤怒の形相を見せると言われている。
しかしここ待乳山でも秘仏で見ることはできない。

私がお邪魔した時には大勢の人が大根をお供えしていた。
待乳山の頂上にある社殿には交差した二股大根が彫刻されていた。
大根のお供えは珍しいがこれが正しいお参りの作法なのだろう。
さらに社殿前には巨大な巾着がある。
この巾着にどんどんお金が入ってきて口をきつく縛れば出て行かない、ということのようだ。
いろいろご利益があるが、もう一つ大事なのは、夫婦和合!だそうだ。
二股大根は健康長寿を願うとあるが、どうも夫婦和合の印でもあるようだ。

私はチベット仏教の聖地を訪ねたことがある。
中国領になったチベットよりもインドのラダク地方に数多くのチベット仏教の古跡が残っており、そこで多くの仏像を見ることができる。
日本の仏教はチベットを経由して伝えられたものが多い。
聖天様もこのルートで日本に伝えられたものだ。
インドのラダクの寺院で見た仏像は歓喜仏と呼ばれるもので、仏様はみな男女和合している。
これをカメラに収めるのはちょっとためらってしまう。
そのような仏様を大ぴらに日本に持ってくることははばかられたのではないか? 
そこで日本の寺院では秘仏にして隠したのではないか。というのが私の推測である。
ちょっと余計な詮索をしてしまった。
これ以上続けると正しい参拝にならないので聖天(歓喜天)の話はここまでにする!

私のもう一つの興味は、待乳山が自然の山かどうかという事だ。
最初に行った時には、下町に自然の山などあるはずはない、目の下にある山谷堀を掘った時に出た土砂を積み上げて作った人工の山であると簡単に結論を出しFBで披露したことがある。

しかし徳川家康が江戸の来た時にはすでにこの山はあったらしい。
山谷掘は江戸時代の掘られた運河なので、その土を盛り上げたという人工の山説は怪しいものになった。
待乳山は真土山ともかかれている。
これは自然の土でできた山という意味なのかもしれない?

待乳山は 10m ほどの高さだから登るのは容易いと思っていたが近年隅田川沿いの登り口にモノレールが設置された。
私の知る限り、東京の超低山で登山用のモノレールが点けられているのは待乳山と王子の飛鳥山だけである。
下町の信者の方々の高齢化が顕著になったのだろう。
モノレール脇、お庭で待乳山の地層をほんの少し眺めることができる。
もしここで火山灰起源の赤土や黒土が見えれば、自然の山と認定することは可能なのだが、どこも植物でおおわれており見つけることはできない。

そこでインターネットにアップされている東京地盤図を見て多少のヒントを得た。
待乳山の地下の地層に上野の山の地層と同じようなものがあると描かれてある。
浅草周辺のほとんどの場所はかなり厚い泥や粘土の地層(沖積層)だが待乳山周辺には台地の地層(洪積層)があるという。
そこからかなり雑であるが私の推測は次の絵図の通りである。
上野の山から続く台地は波に削られて細くなり消滅したが先端の待乳山はかろうじて残ったという絵である。

これで納得することにした。しかし昔の登山家の方々からこんなメールが届いた。

・・・浅草の聖天町、登山靴など職人の店がありました。甲皮を扱う皮屋はこっち岸、川向こう千住方面は腹皮、ちょっと上手方は石けん油脂。日本堤、山谷あたりについては、飯田橋の靴屋「双葉」の天野勝夫さんからしこたま教わった。昔の浅草を思い出します。三輪さんの言う待乳山の築地説は納得です。

エエーッ、私は待乳山の人工説(築地説)を撤回して自然の山説で納得したのに、権威の人に納得ですと言われるとまた迷いがでた。
まだしばらくは悩まなければいけないなぁ!

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