閉じる

ホーム

  •   
  •   

閉じる

山の日レポート

山の日レポート

通信員レポート「これでいいのか登山道」

【連載26】これでいいのか登山道

2024.09.01

全国山の日協議会

よりよい山の道をめざして、私たちにできることは何だろうか?

連載26回目は登山道法研究会代表の上幸雄さんに綴ってもらいました。
「いろんな人が自分の好きな登山道や散歩道の具体例を挙げてみてはどうだろうか。
そのことで、登山道としての基本要件が見えてくる」といった提言です。

連載26  山頂を目指すだけが山登りではない

上 幸雄(登山道法研究会代表)

人は何を目的に山を目指すのだろう

 山登りをする人は何を目的に山を目指すのだろう。山頂に立つことが目的で、いくつ山を制覇したかが最大の関心事の人もいれば、近年の私のように、山頂に立つことにこだわらずに、山で出会う森や花の美しさ、空気のすがすがしさを愛でながら自然の魅力を存分に味わいたいと考える人もいる。

 極端にいえば、山頂に立たなくてもいいと思う。例えば、私が年中行く高尾山では、朝方6号路を登り、人の多い山頂は避けて途中から稲荷道に出て、昼頃までには下山する。これも登山の一形態だと思う。

 さて、山頂を目指す・目指さないのどちらにしろ、その最も重要なツールは登山道だ。登山道が安全で楽しい、充実した施設であるかどうかは、入山者の入山目的や技量や経験、年齢などによってさまざまだと思う。とはいえ、その登山道をなんらかの方法で法制化することは必要ではないか。

 そのためには、登山道の利用者や利用目的が多様であるとしても、最大公約数的に登山道に対する意見を集約し、多くの人が納得できる登山道の定義付けや、規格化をする必要があると思う。この点でも多くの人達が賛同するのではないだろうか。そこで、これからどのような方法、プロセスにより登山道の法制化を進めていくか、検討する必要性がある。

 先ずいろんな人が自分の好きな登山道や散歩道の具体例を挙げてみてはどうだろうか。好きな登山道の基本的な施設の整備状況や特色を整理することで、多くの人が好ましいと思う安全性を基本とした山道、あるいは登山道として、その基本要件が見えてくると思われる。とりあえず、自分自身の好きな登山道の例とその特徴を挙げてみることにしよう。

自分の好きな登山道の例と特徴

1) 北八ヶ岳:唐沢小屋―黒百合平への分岐―渋の湯への分岐―八方台―十字路―唐沢小屋
➨沢沿いの緩やかな登り、尾根道の緩やかな起伏、苔むしたあまり歩かれていない下山路

2) 南八ヶ岳:天女山登山口―天女山―前三ツ頭山―三ツ頭山(往復)
➨苔むした緩やかな樹林帯の上りと下山路、季節を問わず安心して歩ける登山路

3) 奥秩父:後山林道―三条の湯―雲取山―鴨沢
➨沢沿いの淡々とした幅広い平坦な長い道とその後の無理のない登山路、森に包まれた温泉

4) 北アルプス:室堂―一の越―雄山―雷鳥平―室堂
➨岩礫帯の淡々とした登山路と雪渓の残る雄大な三千メートル級の景観、山岳信仰の雰囲気

5) 南アルプス:甘利山(周遊・往復)
➨板道主体の緩やかな登山路、多様な高山植物の景観、広々とした展望

好きな山の情報を収集し整理できれば

 ここに取り上げた事例で共通する事項は、①緩やか、②苔むした森林帯、③通年歩ける登山路、④幅広い道、⑤広い展望・景観である。ただし、登山経験は豊富だが、70代後半の一男性の意見だということを前提にする必要があり、これらの要件が、私にとって好ましい登山道と言えよう。これらの基本要素に加えて、岩場、湿原、お花畑、滝や湖沼などのより個性的な自然があれば、登山道の魅力はさらに増してくると思われる。
 今後、好きな山の情報を収集し、整理できれば、山頂を目指すためのツールとしての登山道ではない、望ましい登山道のあるべき方向が見えてくるのではないだろうか。

私が望ましいと感じた山の道(以下も)

苔むした森林帯。木道も良く整備されている

緩やかで幅広い道

***第2集報告書を頒布中です。 また「登山道」に関するご意見や投稿を募集します***

登山道法研究会では、これまでに2冊の報告書を刊行しています。こちらは本サイトの電子ブックコーナーで、無料でお読み頂けます。
https://yamanohi.net/ebooklist.php

また、第2集報告書『めざそう、みんなの「山の道」-私たちにできることは何か-』につきましては、紙の報告書をご希望の方に実費頒布しております。
ご希望の方は「これでいいのか登山道第2集入手希望」として、住所、氏名、電話番号を記載のうえ、郵便またはメールにてお申し込みください。
●申込先=〒123-0852 東京都足立区関原三丁目25-3 久保田賢次
●メール=gama331202@gmail.com
●頒布価格=実費1000円+送料(370円)
※振込先は報告書送付時にお知らせいたします。

報告書の頒布は、以下のグーグルフォームからも簡単にお申込み頂けます。
報告書申し込みフォーム

先に刊行致しました「第1集報告書」は在庫がございませんが、ほぼ同内容のものが、山と渓谷社「ヤマケイ新書」として刊行されています。
ヤマケイ新書 これでいいのか登山道 現状と課題 | 山と溪谷社 (yamakei.co.jp)

また、このコーナーでも、全国各地で登山道整備に汗を流している方々のご寄稿なども掲載できればと思います。
この記事をご覧の皆さまで、登山道の課題に関心をお持ちの方々のご意見や投稿も募集しますので、ぜひご意見、ご感想をお寄せください。
 送り先=gama331202@gmail.com 登山道法研究会広報担当、久保田まで

危険な箇所も整備が整った道

RELATED

関連記事など