山の日レポート
通信員レポート「これでいいのか登山道」
【連載25】これでいいのか登山道
2024.08.21
連載25回目はYamanashi MTB 山守人代表の弭間亮さんに、マウンテンバイカーも登山道整備というタイトルで綴って頂きました。登山者だけではなく、多くの方々がこの課題について真剣に取り組んでいることがわかります。
弭間亮(Yamanashi MTB 山守人 代表)
近年、日本中の山道(登山道含む)が急速に傷んできています。多くの登山道は整備されてから数十年が経ち老朽化しています。また気候変動による集中豪雨や巨大台風の増加、個人登山増加による登山団体へ所属する人の減少と高齢化による整備の担い手不足、自治体の税収減による登山道整備の予算削減、山間部の過疎高齢化によって多くの人々が山の生活から離れたことも、山道の荒廃に拍車をかけています。
一方で、観光立国を目指した自然体験型観光の推進、森林空間活用、自然環境保護、健康増進、子どもの健全な成長、東京一極集中の是正と農山村の地域活性化、そして地方創生に対し国を挙げて取組んでいます。それらの取組みにとって「山道(登山道)」は重要な位置づけの施設となります。山道は自然に触れる機会の入口を担う重要な施設ですが、この山道の荒廃、維持管理が危機的な状況です。
当団体は、責任あるマウンテンバイク団体として、これまで多くの山道の整備を担って参りましたが、その中には登山道もいくつか含まれます。登山道をルールを守った上で安全にマウンテンバイクで楽しみ、登山者やトレイルランナー、狩猟や林業関係者と共存し、登山道のメンテナンスも担ってきました。そのひとつの事例として山梨県市川三郷町の桜峠ルートの事例をご紹介いたします。
市川三郷町と当団体は「地域活性化包括連携協定」を締結し、マウンテンバイクや山道を活用し街づくりに貢献すべく町と連携して活動を展開しています。その中で当団体は桜峠と呼ばれる登山道をマウンテンバイク利用するだけでなく、正式に山道の整備も担っています。
具体的には、登山道沿いの草刈り、倒木や落石の撤去、立ち枯れ木の処理、洗堀箇所の修繕、排水処理、崩落等の予防策などの土木作業まで幅広く行っています。また、それらの作業を当団体のメンバーとともに定例活動として年間を通して行い、年に1~2回、マウンテンバイクのライドと山道の整備をセットにしたイベントとして一般の参加者も募り開催しています。
老若男女誰でも山道の整備に関わることができるような環境づくりを心掛けており、イベントの際には参加者全員が山道の整備という普段経験することができない貴重な機会を楽しんでもらっています。そして、自分たちが整備した山道をマウンテンバイクで楽しむという喜びを参加者に感じてもらうことで、また山道の整備に携わりたいという気持ちを醸成しています。
山道は、昔、多くの人々や馬が行き交い、林業、薪採り、下草刈り、炭焼き、行商、湯治、通勤、通学、氷運びなど様々多種多様な用途で使われてきました。そして今、登山、林業、狩猟、散歩、トレイルランニング、マウンテンバイクなど時代に合った共存を図り、協力して山道の維持管理に取り組むことで、少しでも次の時代を担う子供たちに、日本の素晴らしい自然や歴史を知る入口となる山道を残していきたいと考えています。
登山道法研究会では、これまでに2冊の報告書を刊行しています。こちらは本サイトの電子ブックコーナーで、無料でお読み頂けます。
https://yamanohi.net/ebooklist.php
また、第2集報告書『めざそう、みんなの「山の道」-私たちにできることは何か-』につきましては、紙の報告書をご希望の方に実費頒布しております。
ご希望の方は「これでいいのか登山道第2集入手希望」として、住所、氏名、電話番号を記載のうえ、郵便またはメールにてお申し込みください。
●申込先=〒123-0852 東京都足立区関原三丁目25-3 久保田賢次
●メール=gama331202@gmail.com
●頒布価格=実費1000円+送料(370円)
※振込先は報告書送付時にお知らせいたします。
報告書の頒布は、以下のグーグルフォームからも簡単にお申込み頂けます。
報告書申し込みフォーム
先に刊行致しました「第1集報告書」は在庫がございませんが、ほぼ同内容のものが、山と渓谷社「ヤマケイ新書」として刊行されています。
ヤマケイ新書 これでいいのか登山道 現状と課題 | 山と溪谷社 (yamakei.co.jp)
また、このコーナーでも、全国各地で登山道整備に汗を流している方々のご寄稿なども掲載できればと思います。
この記事をご覧の皆さまで、登山道の課題に関心をお持ちの方々のご意見や投稿も募集しますので、ぜひご意見、ご感想をお寄せください。
送り先=gama331202@gmail.com 登山道法研究会広報担当、久保田まで
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