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『東京超低山』第7回 築山(3)

2024.06.01

山の日アンバサダー
イラストレーター
中村みつを

「くじら山」

ちょっとユニークな山がある。築山といえば、たいがい大名屋敷の庭園に多くみられるものだが、このくじら山は都立武蔵野公園(小金井市)にある築山。広い原っぱに、ぽこんと盛り上がったかわいい山になっていた。

イラスト:中村みつを

そもそも山名からして変わっている。じつはこの山の成り立ちは近くの小学校を建設したときに出た残土を積み上げたもの。その形が鯨の背の形に似ていたことから、いつしか子どもたちは「くじら山」と呼ぶようになった。現代のおとぎ話のようでとても素敵なエピソードだ。当然、大名庭園ではないので、主役はお殿様ではなく、元気な子どもたちになる。

原っぱから山頂までは高低差にして6mほどの小山だが、思わず誰もが童心に返ってしまいそうなほど魅力にあふれていた。登山路は一応あるがシロツメクサに包まれた草山は好きなようにどこからでも登ることができる。下りはもっと自由だ。転がってもいいし、滑り降りてもいい。

山頂に立てば堂々と木作りの山頂標まであるではないか。よく見ると標高53mと記されている。眺めは驚くほどいい。野川に沿って「はけ」と呼ばれる森の丘陵が横たわって見える。くじら山は小さくたって、立派な山なのだ。

訪ねた日も、小さな冒険者たちが思い思いにくじら山を楽しんでいる。ぼくは心地いい草地に寝そべりながら大空を見上げていた。近くの調布飛行場の小型機だろうか、トンボのように空を飛んでいた。

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