アンバサダー
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『東京超低山』
2024.02.16
東西に細長い東京都。西に目を向ければ奥多摩の山々が広がっている。その最高峰が標高2017mの雲取山で、東京で唯一の2000m峰でもある。
対して東を望めるとビル群が立ち並んだ大都心となる。そんな街なかに「山」などあるはずもないと思われがちだが、じつは10mにも満たない小さな山が東京の空の下にポコポコと点在している。
東京の街に山がある。ぼくがそんな街の山に興味を抱いたのは、もう30年ほど前のこと。普通の山に飽き足らず、ある日、芝大門にあった山の出版社に立ち寄った帰り道にふと目にとまったのが愛宕山(港区)だった。言わずと知れた愛宕神社を祀った「出世の石段」で知られたところだ。
それまで愛宕山の存在は知っていたし、小学生のときに遠足で山上のNHK放送博物館を訪れた記憶もあった。ただそれが「山」としてみてこなかったことに、はたと気付いたのだ。それは目からウロコが落ちる思いだった。
標高26mのこんもりとした山容は、じつに堂々とした姿で街のなかに横たわっていた。このときの感情は不思議なものだった。今まで登ってきた山とは別物の魅力に満ちていた。こうなると東京の街が気になって仕方ない。そう、どこかに宝の山が潜んでいるような気がしてならなかった。その数、ざっと調べただけでも山手100名山と呼べるほどありそうだった。
人気の低山・高尾山よりはるかに小さなもので、見ようとしなければ見えてこない都会の山。それこそ低山と呼ぶには小さすぎる山。そこで定義をするとしたら標高は100m以下、高低差にして50mに満たないものとしてみた。
そんな街のなかの山を「超低山」と名付け、ほどなくして山岳雑誌『山と渓谷』で「お江戸超低山探訪」として連載がはじまった。まだ世の中にそんなに知られていないころのことだ。
まずは超低山を大きく三つに分けてみた。地形がこんもりと自然に盛り上がった「天然の山」。大名庭園などに多くある人の手による「築山」。それに富士信仰からはじまった、富士山を模したミニチュアの「富士塚」。細く見ていけば河岸段丘や台地の段丘などで見かける、片方が急崖になった「見立ての山」というのも江戸東京の山のひとつでもあった。
さて、第8回「山の日」全国大会の東京大会開催に向けて、山の日アンバサダー中村みつをさんの「東京の街の山」のエッセイがスタートしました。
東京の超低山をわかりやすく、どんな人にも楽しめるようにと書いてくださいました。
このエッセイに併せて中村みつをさんからメッセージが届いています。
「東京が都会であると同時に、その街なかに「すてきな山」があることに興味を持ってもらえたら嬉しいですね!」
ぜひ皆さんも都内の超低山を訪ねて、未だ見ぬTOKYOの景色に触れてみてください!
1953年、東京生まれ。16歳でクライミングを始め、登山、カヌーなど楽しむ。
これまでにヒマラヤをはじめ、ヨーロッパアルプス、南米パタゴニアなどを旅する。
フリーのイラストレーターとして雑誌、広告などで描き、また自然や旅をテーマにしたイラストとエッセイの作品を多く手がける。
読売新聞連載の『一歩二歩山歩』(文・みなみらんぼう)に挿絵を21年に渡り1000点描く。
1998年、丸善日本橋店での原画展を皮切りに、各地で個展を開催。現在も2年に1度のペースで開いている。
著書に『のんびり山に陽はのぼる』(山と渓谷社)、『山旅の絵本』(JTBパブリッシング)、『お江戸超低山さんぽ』(書肆侃侃房)、
『森のくらし』(二見書房)、『東京まちなか超低山』(ぺりかん社)、共著に絵本『ビビ』、『ビビのアフリカ旅行』(ポプラ社)、
『山の名前っておもしろい!』(実業之日本社)など多数。
日本山岳会会員
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