山の日レポート
通信員レポート
この時期だけのキタダケソウに会いに
2023.07.05
6月26日~27日、今年初めて北岳に登る。
山開き(6月24日)の混雑を避け平日に北岳(富士山に次ぐ高峰、3193m)に新潟県からの友人3人を含めて7人で出かけた。最大のお目当てはキタダケソウに会うこと。梅雨の最中のそのまた少しの期間にしか開花していないので、雨に降られることはごく当たり前として毎回出かけている。
「草すべり」の二ホンジカの食害で異常繁殖したハンゴンソウやマルバダケブキの背丈は未だ30~40㎝位と低く、その根元にキバナノコマノツメとニリンソウがたくさん咲いていた。小太郎尾根分岐から北岳主稜線の登山道沿いの花は生育開花もいつもより遅れ気味と感じた。すれ違う者も殆ど無く、真夏の喧騒さとは程遠く3000mの稜線をゆっくりと花々を見て歩いた。小太郎山に出かけた4人も北岳肩の小屋に到着、夕食までの時間、山のよもやま話で盛りあがった。
翌朝、6時過ぎに小雨降る中、北岳山頂目指して出発。時折10m程の横殴りの風が吹くが、寒くはない。北岳山頂はわれわれの貸し切り状態。いつも思うのだが北岳は古来信仰の山ではないのに背丈70cmほどの石の仏像が何故か鎮座ましますである。視界20mほどで展望は全く望めない。山頂を離れ小雨と吹き上げる風の中をあちこち歩き、色々な花々に再び巡り合えたことに感謝、これが最後の機会になるやも知れぬとふと思った。
8時頃には雨は止んだが、富士山はずっと見えずじまいであった。今回出会った花は極寒の高地で雪に埋もれながら開花の備えをし、雪融けを待って咲きだしたばかりの花たち。ショウジョウバカマ、シナノキンバイ、イワウメ、オヤマノエンドウ、チシマアマナ、キバナシャクナゲ、ハクサンシャクナゲ、イワベンケイ、キタダケヨモギ、ミヤマオダマキ、キタダケソウ、チョウノスケソウ、タカネコウリンカなどであった。100万年~1万年前の氷河期に繫栄し現在もわずかに高冷地で生き残っている「遺存種」と言われているものは昨今の地球温暖化による影響で、生育する場所が狭められてしまったら自然が創った貴重な宝物を失うことになることは絶対に避けなければないと思いながら下山の歩を進めた
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