山の日レポート
通信員レポート
世代をまたいで受け継がれている雪おろし
2023.02.15
尾瀬にある『原の小屋』で管理人をしている高妻(こうづま)さんから、雪おろしのレポートが届きましたのでご紹介します。
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尾瀬と言えばミズバショウ。だれもが想像できる登山でも比較的ビギナーの方が訪れるエリアとして知られていますが、いったん冬になり雪に閉ざされてしまうとその様相は一変します。
尾瀬は新潟、群馬、福島の県境に位置し、日本でも豪雪地帯と言っても過言ではありません。
その尾瀬に小屋があるわけですから、屋根の上に積もる雪の量は一般の方の想像をはるかに超える量となっています。
昨今の温暖化の影響で昔ほどの雪ではないと言われていますが、昨年は10年に1回レベルの降雪量となり、私たちを苦しめました。
さて、今年もいよいよ雪下ろしシーズンとなり、今年は「尾瀬小屋」さん、「燧小屋」さん、と合同で入山。2泊3日の行程で先週雪おろしをおこなってきました。
昔から檜枝岐村の山小屋は山スキーを使って、雪おろしをおこなって来ています。
現在はスノーモービルやスノーキャット(雪上車)などを利用して御池登山口まで移動ができますので、アクセスも便利にはなったとはいえ、山スキーを使用して燧裏林道コースを移動するのは立派なBCコースと言えます。
また、いまの時代ではGPS機能を駆使して現在位置の把握も容易ですが、そんな電子機器のない時代よりずっと雪おろしは続いています。60年以上も続くこうした雪おろしの為の様々な技術や知識は、世代をまたいで受け継がれているのです。今回も先頭はそうした檜枝岐村の山のガイドさんや猟師さん、また何十年も雪おろしに出かけている小屋の親戚の方々などが、なんの躊躇もなくグイグイとトレースをつけてくれてすすんでいきます。まったく頼もしいかぎりでした。
今回はお天気にも恵まれ、充実した雪おろしができました。尾瀬の山小屋は、こうして冬のあいだも小屋を訪れて、小屋を雪害から守りきり、また春ミズバショウ開花の季節に登山客の皆様をお迎えする準備をすすめていくのです。
1964年愛知県出身。
山岳専門の旅行会社のツアーリーダーとしてアフリカ最高峰キリマンジャロやヒマラヤトレッキングなどをはじめとする山岳地域を歩く経験を積む。
山岳写真家故白籏史朗の助手を務めたのち、南アルプス北岳の山小屋の管理業務に15年間携わる。
2020年より尾瀬「原の小屋」の管理責任者に就任。
山岳冒険小説樋口明雄著「天空の犬」「ハルカの空」をはじめとする数多くの小説のモデルとなる他「北岳山小屋物語」ではノンフィクションで紹介されている。
出演番組:NHK「夏山へgo!」「チコちゃんに叱られる」「ラジオ深夜便」、インターFM「山小屋ストーリーズ」など。月刊「山と溪谷」にも連載執筆経験あり。
【主な講習資格】
MFA(メディック・ファーストエイド®の略)BasicPlusインストラクター
DANジャパン 酸素供給法インストラクター、上級酸素供給インストラクター
【主な所属・担当】
JMGA日本山岳ガイド協会認定登山ガイド ステージ3
UIMLA認定 国際マウンテンリーダー ハイキング/トレッキングガイド
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