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山の日レポート

山の日レポート

良くわかる今どきの山の科学

【連載:山の科学7】山の湖(後編)

2022.02.17

全国山の日協議会

専修大学文学部環境地理学科 教授 苅谷愛彦

◆前回は、火山活動や斜面崩壊に関係した湖を紹介しました。山の湖には、他にどのような成因があるでしょうか。

火口湖やカルデラ湖

火山性のくぼ地のうち噴火活動に伴うおおむね円形のものを火口といい、特に直径約2km以上のものをカルデラといいます。ただし、カルデラには噴火と直接関係のない侵食性や崩壊性のものも含まれます。火口が湖になったものを火口湖といい、エメラルドグリーンに色づいた水を湛えるものも珍しくありません。その形から「釜」と呼ばれることもあり、蔵王火山・御釜(宮城県)や草津白根火山・湯釜(群馬県)などの例があります。また北アルプスの奥座敷にある鷲羽火山・鷲羽池(長野県)も火口湖に分類されます。立山室堂のミクリガ池やミドリガ池(富山県)は、マグマに熱せられた地下水の水蒸気爆発を主な原因として生じた爆裂火口が湛水したものです。カルデラ湖は、しばしば火口湖よりも大きな湖を形成します。十和田火山・十和田湖(青森県・秋田県)や赤城火山・大沼-小沼(群馬県)はカルデラに水が溜まったものです。ちなみに、芦ノ湖(神奈川県)も大きなカルデラ内に存在しますが、最終的な成因は箱根火山最高峰である神山の山体崩壊(約3100年前)によって流出した土砂による堰き止めです。ロープウェイの姥子駅を載せる緩やかな高まりが、この土砂です。

激しい爆裂で生じた火口湖:ミクリガ池(苅谷撮影)

氷河湖

最近、立山連峰周辺で生きている氷河が発見されましたが、いずれも小規模で、顕著な氷河地形を作る状況にありません。しかし約2万年前を中心とする最終氷期には、日本アルプスをはじめ北海道や東北など各地の山々に氷河がかかり、カール(圏谷)や氷食谷(U字谷)を形成しました。氷河の周辺に形成される水域を氷河湖と呼び、ヒマラヤなどに多数の現成の例が認められます。他方、氷河が消えた後の氷河地形に水が溜まった場合も、氷河湖と呼ぶことがあります。日本では形成中の氷河湖はありませんが、カールに小規模な水域が取り残された珍しい例として、木曽駒ヶ岳・濃ヶ池や駒飼ノ池(長野県)が挙げられます。いずれも小規模なため周囲からの土砂流入で埋め立てられ、特に駒飼ノ池は融雪期など一時的にしか水域が現れません。他に、戸蔦別岳・七ツ沼(北海道)や野口五郎岳・五郎池(富山県)も氷河湖に分類してよいでしょう。白馬岳から北を見おろした際に見える長池(富山県)も全体としては大きな氷河地形の底にあるので氷河湖と呼べますが、実際は約1万年前以降に活動しはじめた地すべりの影響を強く受けているとみられます。(続く)

右下に見える木曽駒ヶ岳東面の濃ヶ池(苅谷撮影)

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