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山の日レポート

山の日レポート

良くわかる今どきの山の科学

山の人×科学者でめざす ネイチャーポジティブへの取り組み

2024.01.09

全国山の日協議会

第1回『山の人による環境DNA調査:上高地梓川から見えること』土居秀幸教授

2023年11月5日 宮城県加美町で行われた「山の人×科学者でめざす ネイチャーポジティブへの取り組み 第二回シンポジウム 環境DNA山岳域モニタリング報告会」でのご講演をシリーズでご紹介いたします。
このシリーズはシンポジウムを主催したNPO法人ファーストアッセントジャパン代表、むらかみみちこさんが、当日の講演でのプレゼン資料をまとめたものです。
第1回目は『山の人による環境DNA調査:上高地梓川から見えること』
京都大学大学院 情報学研究科 土居秀幸教授の講演です。
下記から講演の動画もご覧ください。


環境DNA(eDNA)とは?

動植物の排泄物、組織片などに由来する水中に存在するDNAの断片のことです。
1リットルの水を環境DNAで調べてみると
環境DNAの有無から生物がいるかどうか、
環境DNAの量からどのくらいいるか、
を推定することができます。

環境DNAによる おもしろい調査の例

20世紀最大の謎、英スコットランドのネス湖の未確認生物(ネッシー)
の調査に取り組んだ国際的な科学者チームが、
環境DNAの手法を用いました。
環境DNAの解析結果でネッシーの存在を示す科学的根拠は見つからなかったと発表しました。

環境DNA手法

湖や川から水を汲んで、カートリッジフィルターで水を濾した時に、フィルターについたDNAを取り出して解析します。

環境DNAによる生物群の網羅的解析、環境DNAメタバーコーディング

環境DNAによる生物群の網羅的解析、環境DNAメタバーコーディングは、
たくさんいる魚のDNAにおける共通してみられる領域に囲まれた種によって異なる塩基配列を増幅して解析することで、データと照合して魚を同定しています。

川や湖において環境DNAによる生物群の網羅的解析を使うと
捕獲よりもより多くの種の検出ができることがわかっています。

環境DNAのメリットまとめ

・採捕の必要性がなく、調査コストが大幅に削減可能。
・大規模調査や連続調査が容易になる。
・市民調査が可能となる。
・DNAから同定するため、専門的な技術が不要。

2023年上高地 梓川での環境DNA調査で分かった事

上高地での調査地点は
横尾狭窄部上流
横尾本谷 本谷橋
上流一の俣
梓川支流徳沢
河童橋たもとの5地点で調査が行われました。

調査当日は洪水だったためか、
魚類は1箇所で非検出でした。
川での調査ですが、その流域に住む哺乳類のDNAも検出できます。
哺乳類は調査地点全箇所で検出されています。
環境DNA一回の調査で多様な生物の分布を知ることができました。
結果は以下の通りとなります。

魚類
コイ科
ブラウントラウト
イワナ属
アメマスなど

哺乳類
アカネズミ属
ニホンジカ
ノウサギ属
アマグマ属
ヤチネズミ属
モモンガ属
ツキノワグマ

土居秀幸(どいひでゆき)さんプロフィール

1977年生まれ。京都大学大学院 情報学研究科 生物圏情報学講座 専門は生態学。
気候変動による生態系の応答や環境DNA手法によりその水域の生物多様性把握の研究に取り組んでいる。著書「環境DNA: 生態系の真の姿を読み解く」「安定同位体を用いた餌資源・食物網調査法 (生態学フィールド調査法シリーズ)」

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