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アンバサダー

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エッセイ

「山」を学んで見えて来た「川」と「海」

2020.11.11

山の日アンバサダー

身に余る紹介をいただいていますが、研究者というより大学院での勉強途上の学生です。皆さまには山と溪谷社でもお世話になりました。もっと「山」のことを知りたくて、定年退職を機に筑波大学の山岳科学学位プログラムに入れてもらいました。研究テーマは「どうすれば山岳遭難を減らせるか」ですが、山や森林はもちろん、川や海にも関連した研究をなさっている先生方や同僚との触れ合いのなかで視野も広がってきました。

思い出すのは、作曲家の船村徹さんが2008年9月7日の「下野新聞」に寄稿し、山の日制定運動のきっかけともなった文章の一節。「自然界の大摂理として、太古から信仰的にも実生活的にも人類にとっては山海一体なのであった。山に降った雨や雪は、森にしみ出して林を流れ下り村や里をうるおして大河となって、やがて広大な海洋へとたどり着くのだ」。ここ数ヶ月は遠出を控え、自宅近くの荒川土手をゴミ拾いなどをしながら、散策することも多かったのですが、富士山を始め丹沢、奥多摩、秩父、奥武蔵などの山々を眺めつつ、あの遠い峰々に降った雨が徐々に大きな流れとなって、目の前にあることに、今さらながら感動しました。

また、昨秋の台風19号による洪水の際は、改めて自然の猛威を知ると同時に、水が引いた後に残された大量のペットボトルなどを見て、深刻な海洋プラスチック汚染のことに思いが及びました。「One Earth」という言葉もあります。環境問題などを考える上では、「山の日」の催しと「海の日」の関連行事などが連動した「山海一体」の活動などもあれば、国民の祝日としての意義も、さらに増していくのではないか…。そんなことを想う昨今です。

久保田賢次(山岳科学研究者)

写真キャプション
夕暮れ時、東京足立区の住まい近くを流れる荒川の土手からも、源流の山々が美しく見渡せる。山と海とのつながりを実感できる時だ

筑波大学山岳科学センター https://msc.tsukuba.ac.jp/
山の日アンバサダー https://www.yamanohi.net/ambassadordetail.php?id=27

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