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山の日レポート

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通信員レポート

中部山岳国立公園指定90周年記念総合式典が開催されました

2024.12.12

全国山の日協議会

広大な北アルプスの山々を抱える中部山岳国立公園。

去る12月7日(土)、長野県のまつもと市民芸術館にて中部山岳国立公園指定90周年記念総合式典が開催されました。
当会も後援団体としてスタッフが参加しましたので当日の様子をレポートします。
小雪の舞う、冬の訪れを感じる中での開催となりました。

主催:中部山岳国立公園指定90周年記念事業実行委員会
特別協賛:奥飛騨水力発電株式会社
協賛:関西電力株式会社北陸支社、立山黒部貫光株式会社
後援:公益財団法人 全国山の日協議会

来賓:
衆議院議員 下条みつ氏
参議院議員 杉尾秀哉氏
参議院議員 羽田次郎氏
衆議院議員 中川宏昌氏  藤田正純氏(代理)
松本市長代理副市長 宮之本伸氏
特別協賛企業 奥飛騨水力発電株式会社 代表取締役 志田正雄氏
中部山岳国立公園シンボルマーク最優秀作品賞受賞 米泉弘人氏

司会:フリーアナウンサー本間香菜子氏

あいさつ 松本市副市長 宮之本伸氏

 8月に文化庁から上高地に関して松本市が管理団体に指定されました。
今後は文化財としての視点も持ちながら保護・活用を図っていきます。
今日のイベントが、過去90年を振り返り、また今後の中部山岳国立公園に思いをいたす縁となれば幸いです。今日はありがとうございました。

中部山岳国立公園指定90周年記念事業 各県の事業報告

新潟県:
糸魚川市にて蓮華温泉満喫ツアーを実施。
山を身近に感じていただくことで、国立公園のさらなる誘客につとめることを目的とし9月29日に開催し、総勢50名の方にご参加いただいた。当日は自然歩道を散策し、豊かな緑と山岳景観を味わっていただくとともに、蓮華温泉で旅の疲れを癒していただいた。
新潟県における当国立公園は当県最高峰の小蓮華山が座し蓮華温泉からは毎年多くのかたが入山しておられる。
年月とともに登山者の嗜好や様相が変わっていく中で、雄大な山岳景観を楽しむことができる中部山岳国立公園の自然環境を変えることなく100周年を迎えられたら良いと願う。

富山県 
富山在住のフォトグラファー、イナガキヤスト氏の協力で「富山のNational Park展」を行った。北アルプスの自然や山岳風景の写真をご覧いただき、自然環境の魅力や重要性を感じてもらうことを目的とした。
8月12日には富山県登山届提出キャンペーンを山岳ガイド、山岳警備隊員とで実施した。
また、登山道やトイレなどの環境整備、環境モニタリング調査など、ボランティア団体の協力を得て、未来の子供たちに豊かな自然環境を残すために関係者一同取り組んでいきたい。

岐阜県
奥飛騨ビジターセンターをリニューアルオープンした。
高山市の平湯地区にあり、中部山岳国立公園の岐阜県側の玄関口として気軽に利用してほしい。
また8月31日に開催されたサッカーJ3の試合の際にブースを出展しプロモーションを行った。
10月に高山市で行われたONSEN・ガストロノミーウォーキング、11月に新穂高で開催されたヒダアウトドアフリークといったイベントでも中部山岳国立公園のPRをした。

対談企画に先立ち

中部山岳国立公園 管理事務所 野川裕史所長より

(概略)
この国立公園は、北アルプスを中心とした日本屈指の山岳公園です。
登山をする環境をこれからも維持し続けることについて、皆さんの思いを寄せられるような企画を考えました。
ひとつは登山者の目線から 山との付き合い方についてを野口健さんと小林千穂さんに対談していただきます。
もう一つは登山者を迎える山小屋の視点から、登山環境を維持するために登山者に望むことについて若手経営者の方から語っていただきます。

今では登山技術や参考計画をインターネットから情報を得ることができます。
スマートフォンが遭難対策に効果がある一方、レベルに合わない登山や準備が伴わない登山による遭難事例が発生しています。
そのほかにも、利用マナーが伝わらないことでトラブルが発生する現状があるかと思います。

自然環境・社会環境の変化に応じて、これまでの枠組みでの登山道維持が難しくなっているという面もあります。
登山者の方にも登山道の現状について関心をもっていただき、登山道の維持に参加協力いただく、そうした取り組みもしています。

昨年3月、中部山岳国立公園では北アルプス山岳域利用ルールを発表し、登山者一人一人に自覚をもっていただきたいことを掲げました。

北アルプス山岳域 利用ルール(環境省)

PDF:000147890


対談①:野口 健(登山家)×小林 千穂(山岳ライター)「山とのつきあい方」

山との付き合い方をメインテーマに、初めて歩いた北アルプスの体験や登山道の現状、山行計画のポイントの話題など、お二人の豊富な知見が凝縮された対談となりました。

対談②:次世代を担う山小屋経営者

北アルプス地域で多くある山小屋の中から、次世代を担う5人の若き山小屋経営者による対談が行われました。山小屋の立場から登山者に向けて発信したいこと、伝えたいことをそれぞれ熱く語っていらっしゃったのが印象的でした。その様子を一部をお伝えします。

登壇者
佐伯新平氏(剱澤小屋)
百瀬陽氏(針ノ木小屋)
伊藤敦子氏(三俣山荘)
沖田拓未氏(槍平小屋)
中村梢氏(蝶ヶ岳ヒュッテ)

 剱澤小屋の佐伯新平さんは23歳で小屋に入り、17年間は父母と共に山小屋の仕事をしていました。11年前に先代の佐伯友邦氏から経営を引き継ぐことになったそうです。
先代の想いである安全に山を楽しんでほしいという意志を継ぎ、山のコンディションに合わせた登山スケジュールを組むなどして剱岳エリアに遊びにきてほしいと語っていました。
2022年は登山者が多い中で8人いるスタッフのうちの5人が感染してしまい混乱したこと、今年も一人が感染し、まだコロナが終っていないことを実感されているそうです。
今後の課題として、山小屋の次世代への継承を考えなくてはいけないと話をされていました。

 針ノ木小屋の百瀬陽さんは一人っ子ということもあり、行く行くは継がなければいけないと思っていたそうです。小屋では登山道整備など様々な業務をネパールから来られた職人さんに担ってもらっていました。しかし2020年はコロナ禍で営業できず、2021年は日本人と常駐隊の方で登山道を整備しながら営業されました。
登山者にお願いしたいこととして、無理のある計画で到着が遅くならないよう計画や装備を見直して、4時までには山小屋に着いてほしいと話していました。

 三俣山荘の伊藤敦子さんは2000年にアルバイトとして小屋に入り、結婚を機に三俣グループの経営に携わるようになりました。
ハイシーズンの混雑が問題となる中で、定員が強制的に3分の1なるコロナは大きな転機となり、人が減ったことでクマの目撃情報が増えるなど自然と人間社会との境目を感じたそうです。
伊藤さんは、山を守るという視点を登山者の皆さんと共有したい、知ってほしいと強く思っていてボランティアさんを受け入れての登山道整備を行う活動を行っています。小屋の立地が山深いことからも、山域全体で話し合っていくことが大切だと話していました。

 槍平小屋の沖田拓未さんは、子どものころは町と違う環境の山小屋に抵抗があったそうですが、友人に誘われたクライミングをきっかけに登山を始め、再び山小屋に戻ってきたということです。
県境にある小屋のため、コロナの時は県により自治体の方針も変わるため対応が難しかったこと、自然の中では普段見えないことが浮き彫りになるので、そこを面白がるような視点をもって山に関われば登山はもっと楽しくなるのでは、などとお話をされました。
近年では槍平小屋近くの川がキャンプ場をえぐるような流路になってきているため登山道の整備に加えて護岸工事も課題となり、国立公園で色々限られているなかでの対応をされているそうです。

 蝶ヶ岳ヒュッテの中村梢さんは松本で生まれ育ち、先代のお母様が急逝されたのを機に小屋に入って今年で5年目ということです。気候変動、人員不足、オーバーユースなど色々問題があるなかで、国立公園のルールを守り、中部山岳国立公園をどうやって維持していくのか、その是非も含めて関心を持ち続けていくことが大事であると話されていました。また、人と人との縁、環境との縁も大切にしていきたいということでした。

*******
5人の経営者のお話を聞いて、私たちも改めて何ができるのか考えさせられました。

閉会のあいさつ

自然公園財団上高地支部所長 加藤銀次郎氏
(公益財団法人全国山の日協議会 監事)

お寄せいただいたメッセージ

(中部山岳国立公園指定90周年記念総合式典パンフレットより)

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