山の日コラム
通信員コラム
ラダックでゴミを考える①
2024.04.20
「チベットよりもチベットらしい」と言われるチベット仏教最後の聖地、北インドラダック。映画「きっとうまくいく」のロケ地美しい湖パンゴン・ツォを訪れる人がインド国内でもコロナ禍で非常に増えたことからも分かるように、澄んだ空気、青い空、どこまでも広がる山々、まるで天国に来たかのような魅力的な風景が広がり、伝統的な文化と暮らしが息づいている。
「サスティナブル」などという言葉を使わなくても、全てが循環してきた暮らしがそこには在る。土に還り、循環することの中に、本来は私たち人間も含まれている。自然界に無駄はなく、私たちも死後は有機物となり、また誰かの何かの役に立ってきたのだ。
2022年夏の終わり、まだ外国人があまり戻っていないラダックの中心都市レ―の空港に立っていた。いつの間にかどんどん便利に安価で飛行機に乗れるようになり、海外が身近になっていた私たち。急に閉ざされた世界への門。ロックダウンによって社会活動がストップし、インド北部では200キロ近く離れた場所からヒマラヤ山脈が数十年ぶりにはっきり見えた、世界各地で水が澄み空がきれいになった等と報道され、進み過ぎた感のあった便利さの追求から、本当の豊かさにみんなが目を向けた気がした。だが、人はあっという間に忘れてしまうようだ。
初めてのラダックは、ザンスカール方面へ。これまで道路が通っていなかった場所もあり、まだまだ工事途中のところが多く、途中で止まったり、すれ違いができず渋滞が起きてそのたびに戻ったり揉めたり、または誰かが間に入って解決したり、潅水のためドライバー達が降りて石を敷いたりと、長い日は10数時間も頭をぶつけながらのドライブ。店も、もちろんトイレもなく、途中でガイドがくれる小さなリンゴやバナナが楽しみだった。
食べ終わった果物の皮は、「外にポイっとしてね!」とガイドがやって見せてくれる。「いいの~?」と聞いたら、「動物が食べるよ」って。そうか、そうだよね。ここでは、その動物たちの排せつ物を集めて、燃料として大切に使うのだ。自然界に無駄はなく、全てが循環するのだ。
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