山の日コラム
通信員コラム
ラダックに思う③
2024.05.20
かつてラダック王国があったこの地が、ジャンムー・カシミール州の地方政府からインド中央政府の直轄地となったのが2019年。直轄政府予算が大量投入され、今ラダックは劇的に変化している。少し前は通っていなかった道路が整備され、これまでは入ることのできなかった場所へも車で行くことが出来るようになっている。小さな村スムダ・チェンモも、村の実力者の尽力で、数年のうちに道路や電気が通り、Wi-Fiも使えるようになるのだろう。きっと村に残る高齢者たちもそれを待ち望んでいる。人や物が流通しやすくなり、便利な生活は、観光面でも人を呼び、静かな村人の暮らしにも他の動物たちにも変化を起こすだろう。
その地で暮らしている人たちが最適だと思うことを自分達の意思で選択し、未来を切り拓いていくこと。外部の人間である私たちには、ただ見守ることしかできないけれど、一度失くしたものは、戻らないのだということを、誰もが分かってはいるはず。何が幸せなのか、誰の幸せなのか。風景は変わってしまうかもしれないけれど、いつまでも人々のキラキラした笑顔を見ていたいと思う。
標高4500メートル、世界一の高所に建てられたインド国立天文台のあるヒマラヤ奥地ハンレの村にも、去年から外国人の滞在が許可された。ラダックは今後ますます発展して行くのであろう。
チベットはどうか。現地に詳しい人に聞くと、インフラが整備され、首都ラサを始めとしてどんどんとローカルな風景は失われているとのこと。チベット文化圏で最後の秘境はもはやラダックだけなのかもしれない。
中心都市レーとザンスカールをチリン経由でつなぐ道路は、ロバを連れたトレッキングの時ちょうど工事が行われていた。
冬は川が凍り、ザンスカール川はチャダルという氷の回廊を歩くしかなかったところは、この3月ついに道路が開通したらしい。
地元の人たちにとって、悲願であった新しい道路の開通によって、また一つ伝統文化が失われたことになる。
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