山の日レポート
通信員レポート「これでいいのか登山道」
【連載】これでいいのか登山道
2023.05.20
「登山道のために何ができるのか?」という、私たち山を愛する人たちにとっての課題について、数年前から研究活動を続け、法整備の必要性を説いている「登山道法研究会」の方々により4月から始まった新連載。
第2回目は「研究会の歩み」について広報担当の久保田賢次さんに教えてもらいました。
登山道法研究会設立の発端となったのは、山はみんなの宝クラブの主催で、2018年9月28日に行われた「登山道は奇跡の道」という講演会でした。
「奇跡の道」。いつの時代に誰がなんのために作ったものなのかも正確には分からない。ただ、そんな道を、私たち山を愛する者は利用させてもらっている。この道を維持するためにできることは何か。といった発想が行動の原点でした。
この講演会に集った方々や、日頃から山岳地域の環境や登山道に関心を寄せる人たちによって、その後も継続的に勉強会を続けようということになり、先ずは、それぞれが関心を持っているテーマを綴ったり、各地の山々へ登山に出かけた際に、登山道や道標などの状況を調べて、調査報告書を出そうということで動き出しました。
その頃は私自身も、山に出かける度に、眼下に眺める美しい風景を味わったり、綺麗な花や樹々に感動することよりも、足元の登山道や道標ばかりに目が行き、荒廃してしまった登山道を見ては写真に収め、歩きやすく整備された道と出会っては、感銘してシャッターを押したものでした。
研究会という組織が正式に立ち上がったのは、2019年9月29日、三国峠(群馬県・新潟県の境)での現地視察会の時でした。その夜は会員の別荘に泊まり、豊かな自然に包まれた野趣あふれる場所で、話し合いを重ねた結果、登山道法研究会という名称や、当面の活動方針などが具体的に見えて来ました。
その後も都内で、年に数回のペースで会合を重ねましたが、折しもコロナ禍のため、大勢で集まることや、講演会やシンポジウムなどの開催も困難ななかでしたが、全国各地の状況調査結果を中心とした報告書『これでいいのか登山道』を刊行できたことは、とても意義深い一歩だったと思います。
2021年の「山の日」に刊行した報告書は、登山雑誌や新聞各紙などの記事にも取り上げられ、この課題に関心をお持ちの全国各地の皆様から、「ぜひ報告書を入手したい」とのご希望があり、刊行した1000部全てが皆様の手元に渡りました。
同時に、山と渓谷社から「大切な内容なので、ヤマケイ新書として刊行したい」との話をいただき、その年の暮れに、一般書籍として刊行されたことも、ありがたいことでした。
報告書を読んだ方々からの依頼を受けて、地域で開催される集いに講師として招かれたり、会員が新聞の取材やテレビのインタビューの要請を受けたりと、メディアでの露出機会も徐々に増えて来ました。
さらに、この2月には、山の日議員連盟の総会に招かれ、話題提供の機会を得ることもできました。
あわせて、実際に整備活動の現場で汗を流している方々とお会いして、話をうかがうことも大切だと考えています。研究会の会員自身も、例えば北アルプス、焼岳での登山道整備活動体験に参加したり、山梨県道志村で林業や地域振興などに携わる会員の案内によって現地視察会を開くなど、現場での活動にも重きを置いています。
また現在は、この夏の刊行を目指して「報告書第2集」の編集も進めています。全国各地の、登山道の課題に関心を持つ幅広い方々から寄せられた意見や提案を満載した内容です。ご希望の方々への頒布要領なども、刊行後に改めてお知らせ致します。
次回(第3回)は「どうして法整備が必要なのか」について記します。以降、研究会のメンバーによる連載に加えて、全国各地で登山道整備に汗を流している方々の寄稿なども掲載できればと思います。
この記事をご覧の皆さまで、登山道の課題に関心をお持ちの方々のご意見や投稿も募集しますので、ぜひご意見、ご感想をお寄せください。
送り先=gama331202@gmail.com 登山道法研究会広報担当、久保田まで
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