山の日レポート
通信員レポート
雪の中での暮らし2
2023.03.01
私の暮らす石谷は、冬は2、3メートルの雪が積もりますと話をすると、では一体冬は何をしているのですかと聞かれることが良くあります。私自身、移住してくる前は、冬の仕事がまるで想像できず、晴耕雨読ならぬ、夏耕冬読でのんびり過ごすのかなと思っていたくらいです。実際には、細々とやることがあり、思ったほどのんびりはできません。
まずは、除雪です。ここは雪国。雪が降り積もると家の前や車庫などを除雪しなければ、暮らしに支障がでます。今でこそ中古の除雪機を手に入れ、除雪が楽になりましたが、最初の頃はスノーダンプと呼ばれる道具とスコップで、汗まみれになりながら、雪を掘ったり、排雪したり。かんじきをはいて、屋根とつながってしまった雪を取り除いたこともありました。
次に、夏の間にためにためた事務仕事が待っています。確定申告に備えて、あちらこちらから領収書などの書類を引っ張り出し、パソコンとにらめっこ。移住してくる前は、事務所でパソコンを前に一日過ごしていたはずなのに、今は1時間もすれば、肩が凝ってくるので、体が農業仕様になったなぁと我ながらおかしく感じます。
そして何よりの冬の仕事は、地区の農産加工所、川谷生産組合での味噌の仕込みです。川谷生産組合は、廃校となった川谷小学校を30余年前に農産加工所として整え、地元の母ちゃんたちが昔ながらの作り方で味噌と漬物を作ってきた加工所です。スタッフの高齢化を理由に、加工所を閉めようかと考えていたところに、先に移住し、農産加工に興味を持っていた夫が加わり、さらに私も移住してきた3日目から「一人で家にいても暗くて、寒いだろうし、お茶でも飲みにおいで」と前代表に誘われ、自分の荷物も片付けないうちに味噌作りを手伝うようになりました。そしてそのまま夏場の漬物作りも手伝い、翌年には代表を引き受け、ベテランスタッフに指導されながら今に至ります。
さて、この冬は約10トンの味噌を仕込む予定で、ようやく半量を仕込み終えたところです。84歳を筆頭に数人のスタッフで、麹の引き込み、麹の手入れ、豆煮、仕込みと作業を回していきますが、途切れなく続く仕事で、気の抜けない日々です。
春に向かって徐々に暖かくなる中で仕込む味噌は、温度の上昇と共に緩やかに発酵が始まり、夏場でも比較的涼しい山の中でゆっくり、じっくり味噌になっていきます。そうして1年かけて作り上げた味噌は、塩角がとれ、口に含むと旨味を感じられるようになります。
この土地で作られた米や豆が、この地の自然と、地元の人の手によって、美味しいものになっていく様子をつぶさに見られる味噌の仕込みという仕事は、実に清々しい仕事だなぁと思う日々です。
新潟県上越市の石谷集落に移住し家族と共に農業を営んで8年目になる鴫谷玉実さんからのレポートです。
第1回は、初夏の笹仕事 2022.07.07
第2回は、夏野菜三昧 2022.08.09
第3回は、山の稲刈り 2022.10.18
第4回は、雪の中での暮らし1 2023.1.24
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