山の日レポート
通信員レポート
【連載:登山道保全活動1】~山脈を愛する人たちの取組~
2022.02.18
今年の第6回「山の日」全国大会開催地の山形からのレポートです。
磐梯朝日国立公園の管理を担う環境省羽黒自然保護官事務所の風間さんから、朝日連峰・飯豊連峰の登山道保全活動について綴っていただきました。
現在、我が国には、34箇所の国立公園が存在している。国立公園とは、日本を代表する傑出した自然の風景地であり、自然を保護しながら我々人間も利用するための区域である。
磐梯朝日国立公園は、山形県、新潟県、福島県の3県にまたがる広大な国立公園である。その中でも、飯豊連峰、朝日連峰は原始性豊かな山脈が広がる、まさに傑出した自然の風景地である。山脈からは日本海が見下ろせるほど海が近く、それ故冬の季節風が直接山脈に当たるため、日本有数の豪雪地域となっている。また、日本最大規模のブナを主体とする原生林が発達し、野生動物や植物の貴重な生息地となっている。
飯豊連峰は2000m級の山々が連なる、東北地方最大級の山脈である。各登山道までのアクセスは容易ではなく、登山口から主稜線までは急登が続き、所要時間の長さも他に類を見ない。朝日連峰は1800m級の山々が南北に延びる山脈であり、その雄大さは飯豊連峰にも劣らない。
両山脈共に宿泊施設は避難小屋のみである。登山者は寝具・食料一式など自らの力で運び上げる体力が求められる。また、ガレ場、鎖場、徒渉など、高度な技術を要する箇所が点在し、天候の急変も著しいため、経験を積んだ玄人向けの山脈である。また、山岳信仰などで切り開かれた古道が現在の登山道になっている場所も多くあり、先人の足跡を辿ることができる貴重な山脈でもある。
しかし、近年、登山道の荒廃が課題としてあげられている。飯豊連峰・朝日連峰の登山道を歩いていると、V字浸食が激しい箇所や道の側面が削られている箇所、裸地化して植物が生えていない箇所が多く見られる。これらの多くは「人・水・低温」の3つの要因が混ざることによって起きていると考えられる。昔から多くの登山者に利用されてきた登山道は、人間の踏圧により踏み固められてきた。踏み固められた登山道に山岳地域特有の大雨が降ることによって、雨水が大地に浸透できずに一本の筋となり、登山道自体を削っていく。そこに追い打ちをかけるように日本海側の山脈特有の低温状態が繰り返されることによって地面が軟弱になり、登山道の荒廃がますます激しくなる。この荒廃を、山脈を愛する人間自らの手で修復していこうと立ち上がった取組が、飯豊連峰保全連絡会・朝日連峰保全協議会である。
次回は【連載:登山道保全活動2】~発足から10年国内では唯一の取組~へと続きます。
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