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山の日レポート

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通信員レポート

「置いてくるのは足跡だけ」

2021.12.03

山の日通信員
全国山の日協議会広報担当理事
久保田 賢次

南信州で体験したエコ登山の試み

この秋、南アルプスの光岳に登る機会があった。私が暮らす東京からは、なかなか遠い山だが、今回はぜひ出かけてみたい理由があった。南信州山岳文化伝統の会が行っているエコ登山の試みを体験してみたい。そんな楽しみを胸に、早朝の新宿駅を立ち、甲州、信州の山景色を眺めつつバスで飯田へと向かった。

光岳の名前の由来ともなった光岩で

「日本の山で北米のような世界水準のエコ登山を」。地元の出身の大蔵喜福さんらが、そうした思いで故郷、南アルプスの最南部でプロジェクトに取り組んでいる。大蔵さんには前職の山と渓谷社に勤務していたころから、なにかとお世話になって来た。一緒にこの取り組みを始めた原一樹さんも、長野県で信州山のグレーディングの普及に努めていらした頃からの知り合いだ。

テイクイン・テイクアウトで、すべてのゴミを持ち降ろす。もちろん排泄物を含めて。そんな構想の実現に向けて会が立ち上げられたのが2019年。インバウンドに向けたブランド化に動き始めた矢先、感染拡大が世界を席巻した。しかし「コロナ禍も、ある意味見方になったような気もする」と、大蔵さんの構想は、ますます膨らみつつある。

旧木沢小学校の会事務所の玄関で。中央が大蔵さん

当日、案内をしてくれたのは地元阿智村出身で、今は恵那山に近い富士見台高原・萬岳荘の管理人もしている登山ガイドの原誠一さん。私の学生時代からの山仲間だ。先ずは南信州山岳文化伝統の会の事務所がある旧木沢小学校でレクチャーを受けて出発。その日は易老尾根の面平に設けられたレンタルテントのキャンプ地に泊めてもらう。炊事用具や携帯トイレブースなども備えられた快適で心地良い森。周囲にはサワラの巨木なども見事だ。

面平に設けられたキャンプ地

翌朝、朝霧が立ち込める中、光岳へ向けて出発。南アルプスらしさを実感させてくれる急登が続くが、標高を上げるにつれて、聖岳などの雄大な山なみの展望が迎えてくれる。その後、今年は残念ながら感染下で営業を休止し開放となっている光小屋にもう1泊させていただき、2泊3日の山行を満喫したが、古から変わることのないこの山域の奥深さと自然の濃さ、地域に新しく生まれ、多様な生態系の魅力や、山村文化の歴史を伝えてくれる「新しい試み」の両方を充分に味わうことができた。

光岳から深南部の山々を望む

*ここでは充分に紹介できませんが、大蔵さんらの活動の詳細は日本山岳会の晩餐会ウイークでも視聴できます。対面での年次晩餐会は昨年に続き中止となりましたが、12月3日~1週間、オンラインによる様々な講演会が催されるなか、12月9日(木)19:00から「置いてくるのは足跡だけ、南信州山岳文化伝統の会のエコ登山の試み」としての講演があります。もちろん日本山岳会会員でなくても視聴可能です。

南信州山岳文化伝統の会  

日本山岳会晩餐会ウィーク 

日本山岳会晩餐会ウイークfacebook 

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