山の日レポート
山の日インタビュー
「宙師(そらし)ラマ・ゲル・シェルパ 登山で培った技術で、いま信州の森を守る」4
2026.05.25
鹿野 「今、シェルパ林業で働いているかたは何人いるんですか」
ラマ・ゲル 「アルバイトの人も入れて、全部で10人ですね。日本人が5人、ネパール人が5人。そのなかで経理とかの事務仕事は、妻がやってくれています。あとは基本的には、現場要員です。この事務所には、わりと最近移ってきたんですけど」
鹿野 「機材とかもかなり持っているんですか」
ラマ・ゲル 「機材っていうと、伐採なんかの作業に使う道具のほか、一般的な運搬用のトラックとか現場への移動用のワゴン車なんかは持っていて、少し離れたところにおいてますけど、大型のクレーンとか、伐採した木材をチップにして処理する機械とか、特殊なものは、必要に応じてレンタルですね。場合によっては、オペレーターもつけてもらいます。はじめはどこで借りたらいいのかわからなかったり、借りようとしてもなかなか貸してもらえなかったりしたこともあったけど、最近はおかげさまで信用もできたせいか、借りるのにもそれほど苦労はありません」
鹿野 「仕事の内容としては、どんなものが主で、どういうところから依頼が来るのかしら」
ラマ・ゲル 「樹木にかかわることなら、要望があれば、なんでもやります。いわゆる植木屋さんがやる、個人の庭にある樹の剪定から、街路樹や公園みたいな公共用地にある樹木の剪定や、支障木っていうんですが、例えば枯れてしまった樹や伸びすぎて建築や電線に引っ掛かりそうな危険な樹木の除去、製紙会社なんかが持っている山林や、国や自治体、森林組合なんかが持っている森林での伐採、植林、森林の下にある草地の草刈り、林道の整備、ときには産業廃棄物の運搬まで、けっこう仕事の内容は幅広いですね。
ただ、仕事は必ずしもうちに直接来るとは限りません。国や自治体の仕事だと、内容が公示されて、そこに入札するわけです。うちももちろん入札に参加することもありますけど、おおきな仕事全体を引き受けるのは、なかなかむつかしい。でも、落札した業者さんから、この仕事のうち、この部分はラマちゃんのところが得意そうだから、そこを頼もうかっていう具合に話が来ることもある。特に、やっぱりいわゆる宙師的な仕事かな。仕事としては、下請けとか、孫請けってことになりますか」
鹿野 「なるほど。ということは、このあたりの林業関係の会社のあいだでも、シェルパ林業の得意な分野が、知られてきているわけだ」
ラマ・ゲル 「はい、仕事としては下請けですけど、でもそう言う仕事がくるってことは、うちの技術力っていうか、仕事の仕方みたいなものがそれなりに評価され、信用されているっていうことですよね。これはありがたいっていうか、うれしいことです。同業者って、ある意味ではライバルなわけだけど、一方では互いに支え合っている面もある」
鹿野 「それはつまり、あなた自身やシェルパ林業っていう会社が、地域社会の中に、森や林を守ってゆくうえで不可欠な存在だって思われて、業界っていうか、地域社会にしっかり組み込まれるようになってきたということだよね」
ラマ・ゲル 「会社を作って十数年ですけど、やっとそうなってきたのかな、って感じています。私はシェルパですから、そのことにプライドを持っていますけれど、妻は日本人だし、子供たちも3人いるんですけど、日本のなかで育って、この地域で教育を受けて、上の2人は就職したり、大学にいったりで、いまは普段はここにはいないんだけど、休みにはやっぱり戻ってくる。ネパール人とか日本人とかは、あんまり関係ないような気がします」
(続く)
撮影:理事むらかみみちこ
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