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山の日レポート

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山の日インタビュー

【連載⑬】東奔西走 ダルマ・ラマ 富山からネパールと日本、世界をつなぐ

2025.02.01

全国山の日協議会

第13回 続編をお届けします

葉っぴーファームでのダルマさん

鹿野   「今回は富山大学の先生なども同行されたそうですが、その方たちはどういう目的で行かれたんですか。」
ダルマ  「一緒に行ったのは、工学部の建築の先生と、医学部の先生やその知人の方たちです。建築が専門の方は、2015年の地震のあと、被害状況の調査から始まって、その後、地元で調達できる素材と、地域の伝統的な技術をなるべく生かしながら、できるだけ耐震性があって、かつ住みやすい家を建てるための提案をすることを目的に研究を続けておられる方で、もうネパールには10回以上行っておられます。今回はネパールのトリブバン大学の建築が専門の先生方や学生、院生との意見交換が主な目的でした。地震直後には、日本からの直接的な支援や調査のためにネパールに行く方も多かったけれど、それ以降も継続的な交流を続けていただいているのは、とてもありがたいと思っています。」

リサンクの仏教寺院(ダルマさん提供)

鹿野   「なるほど。日本もネパールも地震の多い国ですから、日本の研究者にとっても、ネパールの伝統的な建築の技法や問題点、住民の家屋についての考え方、さらには防災に関する意識など、現地で学ぶことは多いと思います。ただ、研究者の場合、研究者間の交流はわりあい容易にできても、住民、それも地方の方々とじかに接して情報を収集したり意見交換をするのは、なかなかむつかしい。ダルマさんみたいな、双方をつなぐことができる存在は研究者にとっても貴重なんです。」
ダルマ  「そうですか。なるほど、そうかもしれませんね。」

法要には同行した日本人も参加した(ダルマさん提供)

鹿野   「医学部の先生方というのは?」
ダルマ  「それは、これまで富山のネパール文化交流協会にかかわってくださっていた先生がメンバーになっている医学系の分野の学会がたまたまカトマンズであって、他にその先生の知人で高岡や名古屋におられる先生方も参加されるということで、ご一緒しました。時期が重なったという偶然のおかげですけど、せっかくなのでリサンクにも同行していただいたし、カトマンズでは私の親戚の婚約式があったので、そこに参加していただいたりもしました。まあ、ネパールの文化のいろんな側面を見たり、感じていただくことが、今後の幅広い文化交流につながるかもしれませんし。」

カトマンズでのダルマさんの親戚の婚約式で(ダルマさん提供)

鹿野   「たしかにそうですね。ところで、前のシリーズでは、ダルマさんを、日本の先進的な野菜栽培農家、具体的には小松菜農家として紹介するのとあわせて、当時スタートしていた、ネパールでエゴマやソバの生産組合を立ち上げた話にもふれたわけだけれど(注)、その記事を見た方はそれら農業のほうの現状や進展具合も気になっているかもしれない。射水市も今年の元日の能登の大地震で、かなりの被害もあったようだし。そのへんも含めてどんな状況か、少し話していただけますか。」

葉っぴーファームの小松菜畑で作業中のダルマさん

ダルマ  「地震については、私が住んでいる射水でもだいぶ揺れて被害もあったけれど、葉っぴーファームは、おかげさまでほとんど被害もなく、順調です。
リサンクを含む東ネパールでのエゴマ栽培は、それなりに順調に進展しています。今回は、そちらの方は、具体的なことはあまりやっていないんですが、西ネパールのソバの生産組合のほうでいろいろ問題があって、実質的にちょっとストップした状態なので、はじめはそちらに導入するつもりだった農業機械類も、いまはエゴマの生産組合のほうにまわして使っています。
収穫したエゴマは、日本だけでなくイギリスやフランスからも引き合いが来て、びっくりしました。バクタプールにある現地法人の責任者をしている弟が、この間、その打ち合わせのためにヨーロッパに行ってきました。納品先が一つでなくて複数あるのは、いろんな意味で大事なことかなと思っています。」

ネパールでのエゴマ栽培(ダルマさん提供)

鹿野   「そうですか。小松菜がパリに空輸されてるっていう話にはびっくりしたけれど、ネパールで生産されているエゴマもヨーロッパへ進出ですか。なにより現地の生産組合の方たちが、驚いているでしょうね。でも、有機栽培されている健康食品素材としてのエゴマがヨーロッパで受け入れられるっていう話は、聞いてみればいかにもありそうな気がする。いよいよ葉っぴーファームがネパールと世界をつなぎ始めたわけだ。」

(注) 「東奔西走」 第8回参照
聞き取り  2024年11月30日 葉っぴーファーム
構成 鹿野勝彦



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