山の日レポート
山の日インタビュー
【連載⑰】東奔西走 ダルマ・ラマ 富山からネパールと日本、世界をつなぐ
2025.04.15
鹿野 「今年の2月、3月はけっこう雪が降ったけれど、小松菜のハウスに被害はありませんでしたか」
ダルマ 「はい。古いハウスの一部はすこしゆがんだりしたけれど、たいした被害はありませんでした」
鹿野 「それはけっこうでした。で、ダルマさんは、1月末に、またネパールに行かれたんでしたね。今度はどんな目的で行かれたんですか。
葉っぴーファームでのダルマさん(2025年3月29日)
ダルマ 「1月の21日から28日まで、カトマンズとタライ(注)のチトワン、ジャパのあたりへ行ってたんですが、目的は大きくはふたつあって、経済産業省の補助金を受けての生ごみなんかを有機肥料にするプラントの設置と、そこでできた肥料を使って野菜を生産するプロジェクトを進めることです」
鹿野 「それはけっこうおおがかりな仕事ですよね。まず一番目のほうから、少し具体的に説明してもらえますか」
プロジェクト実施のための横須賀市での日本、ネパール双方の代表者の会議(2024年12月)
ダルマ 「はい。いま、ネパールでもごみ処理の問題は、特に都市部では深刻になっています。日本なんかでは生ごみは焼却するところが多いし、その熱の利用もしているけれど、ネパールではほとんど埋めたてで、都市化に伴ってその用地が不足したり、処理が不十分で環境問題が発生したりしていますし、運搬の費用も馬鹿にならない。それを日本の技術を使って生ごみ、ネパールの場合は家庭や施設、企業の出すごみだけでなく、畜糞なんかも入りますが、そういったごみから有機肥料を生産し、地域の農業にも役立てようということです。具体的には、群馬県のある会社のプラントをネパールに導入して自治体の責任でそれを設置し、ごみによる環境問題を解決するとともに、生産した肥料を地域の農業生産者に販売し、土壌改良や生産性の向上につなげるのがねらいですね。プラント設置経費は一か所あたり数十億円になりますが、その三分の二は日本側、つまり経産省が補助し、三分の一はネパール側のプラントを設置する自治体が負担する。場所としては当面カトマンズ盆地内に1か所、タライのどこかに1か所の2か所を予定しています」
日本のゴミ収集を視察するネパールの担当者(2024年12月)
鹿野 「そこでのダルマさんの役割は、なんなんですか」
ダルマ 「日本側とネパール側の当事者の間をつないで、計画を具体化するためのお手伝いをすることですね。実はこのプロジェクトは以前から動いていて、昨年の12月にはネパールでプラントの受け入れをする自治体なんかの人たちが12人視察、研修のために日本に来て、私もその人たちと一緒に横須賀や、群馬県の舘林にあるプラントの製造会社で一緒に研修も受けました」
鹿野 「ああ、そこまで進んでいたんだ。じゃあ今回のネパール行きは、そのプラント受け入れのプログラムを促進するためだったわけですね。で、時期的にはいつごろまでにプラントが設置される予定なんですか」
ダルマ 「プラントの設備等を発送するのは5月くらいを予定しているようですが、それを現地に搬入するにはすくなくとも1、2か月くらいかかるし、それから建設、組み立てをして、完成するまでには半年くらいかな。だから計画通りに行けば2026年の1月くらいにはプラントが稼働し始めて、実際に受け入れたごみが肥料になるまでにも1か月くらいかかるはずだから、なんとか今年度中に肥料が出荷できるようになればいいなって思ってます」
チトワンでの日本側、ネパール側の担当者の打ち合わせ(2025年1月)
※注 タライ ネパール南部のインドとの国境地帯で標高数百メートルまでの亜熱帯低地をさし、かつてはマラリア等の風土病のため人口が少なかったが、20世紀後半から、WHOのマラリア駆除プロジェクトが実施されたあと、丘陵・山地部からの移住と開発が進んだ。
※写真 ダルマさん提供
※聴き取り 2025年3月29日 葉っぴーファーム
※構成 鹿野勝彦
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