山の日レポート
山の日インタビュー
【連載⑯】東奔西走 ダルマ・ラマ 富山からネパールと日本、世界をつなぐ
2025.03.15
鹿野 「ダサインを見ていてもう一つ、びっくりしたのは、参加している日本人は、わりと高齢者のかたが多かったけれど、こちらも本当に熱心に、そして楽しそうにお世話をしておられた。そもそも利賀って、富山県内の観光地だけれど、アクセスは決して良くない。特に「瞑想の里」までは、公共交通ではたどり着けないじゃないですか。だから車を持たないネパール人の参加者はどうやってきたんだろうって思った。」
ダサインに参加した日本人とネパール人
ダルマ 「富山と高岡の駅前から、小さなバスを1台ずつ出してそれに乗ってきてもらうようにしたんですが、それを使ったのはネパール人の参加者の半分くらいかな。あとは日本人の参加者にお願いして、近くに住んでいるネパール人を何人か拾ってきていただきました。」
鹿野 「その手配もダルマさんがしたわけですか?」
ダルマ 「はい。ワゴン車を持っている方には、途中で5~6人拾ってきていただいたり、軽トラックで来る方には食材や大なべやプロパンガスのボンベ、コンロなんかを運んでいただいたり。でも何年かやっていると、じゃあ今年もこれは引き受けるからって言って下さる方がおられるから・・・。」
食事の準備もネパール人と日本人が一緒におこなった
鹿野 「なるほど。そういう方たちがダサイン、というか協会の活動全般を支えているわけですね。それも地震の支援をきっかけに、ということですか。あるいはもともとネパールやその文化に関心を持っていた方だとか。」
ダルマ 「たしかにそういう方も何人かおられます。青年海外協力隊やそのシニア隊員なんかで何年もネパールにいた方や、仏教画の画家としてお付き合いのある方もいるけれど、でも必ずしもそういう方ばっかりではないですね。
私となにかの、たとえば農業を通じておつきあいがある方で、ネパールそのものにはそれほど関心がなくても、まあダルマに頼まれたからしかたないかとか。
やはりもともと富山県内のいろんなところで働いている外国人の実情については、ふだんから気になっておられて、この際、そのあたりをすこしでも理解したいとか、助けたいということで参加してくださる方もいます。まあ、ひまだからね、とかボケ防止のためだとかおっしゃりながら。
それで実際にネパール人と直接のふれあう機会があると、やっぱりしだいにネパールやネパール人そのものに対しても興味が湧いてきて、積極的に活動に参加してくださるようになる。」
食事の準備もネパール人と日本人が一緒におこなった
鹿野 「ダルマさんを通じての個人的なつながりが、協会の活動の広がりを造ってきたわけだ。私が住んでいる石川県でも、最近はネパール人は増えてきて、おそらく富山県と同じかそれ以上の人数になるんじゃないか。でもそういう人達を結びつける、あるいは日本人との交流を図る組織はありません。実は20年位前に石川ネパール協会みたいなものが出来て、当時のネパール大使を招いて華々しくスタートしたんだけれど、その後立ち消えになってしまった。やっぱりそのころは、ネパールの文化に関心のある研究者を中心とした日本人と、ごく少数の金沢大学なんかにいるネパール人留学生だけの会だったからでしょうね。石川に限らず、日本の多くの地域では、似たような状況にある。」
ダルマ 「そうだろうと思います。今は来日するネパール人の数が増え、それにともなって問題も増えた。で、受け入れの体制がなかなか追いついていない。富山県の場合も、今のやり方ではそろそろ限界かなって感じています。ダサインも、来年は10周年になるから、また利賀でやろうって言ってますが、その次くらいにはどうなるか。」
食事の準備もネパール人と日本人が一緒におこなった
鹿野 「いっぽうで、こういう活動の必要性は、今後さらに大きくなる。富山ネパール文化交流協会にしても、そこでのダルマさんの役割にしても、形は変わっていくのかもしれないけれど今後はこれまで以上に頑張っていただかないといけないような気がします。」
ダルマ 「ありがとうございます。今、私だけでなく、日本のあちこちに、かなり長く日本に住んで、社会的にも安定した立場を築いてきたネパール人も、少しずつ増えてきました。そういう人たちと協力して、日本に来るネパール人と、日本の地域社会との結びつきをすこしでも安定したものにしてゆくお手伝いをできればと思っています。」
鹿野 「ところで、近いうちにネパールに行く予定はあるんですか」
ダルマ 「はい。来年(2025年)1月に行くつもりです。新しい農業関係のプロジェクトが始まることになりそうなので。」
鹿野 「じゃあ、帰国されたらまた話しを聞かせてください。」
※写真 ダルマさん提供
※聞き取り 2024年11月30日 葉っぴーファーム
※構成 鹿野勝彦
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