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山の日レポート

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通信員レポート「これでいいのか登山道」

【連載】これでいいのか登山道

2023.10.02

全国山の日協議会

よりよい山の道をめざして、私たちにできることは何だろうか?

 おかげさまで、この連載も12回目となりました。今回は、この夏も話題になった富士山の現状について、登山道法研究会副代表の森孝順さんに綴ってもらいました。この記事をご覧頂いての、皆様の感想やご意見なども、ぜひお寄せください。

朝霧高原からの初夏の富士山

連載⑫ 弾丸登山から見える富士山の特異性(1)

文・写真 森 孝順(登山道法研究会副代表)

弾丸登山への過熱する報道

 コロナ禍による行動制限の緩和を受けた登山シーズンを迎え、久しぶりに富士山は多くの登山者で賑わいました。連日、マスコミで繰り返し報道されたのが、弾丸登山の危険行為への注意喚起です。検索すると以下のワードが、次から次へとでてきます。

 登山道で仮眠、サンダル、ホットパンツ、100円ショップの雨具などの無謀な軽装登山。高山病や脱水症状で動けなくなる人、転倒や道迷いで救助を求める人、外国人のルールを守らない集団。
 山頂直下での長蛇の列、超過密、落石事故の恐れ、スバルラインの営業短縮の検討、入山規制と入山料の強制徴収、山梨県による登山規制の導入検討。
 いつ大きな事故が起きても不思議じゃない、富士登山はもうグチャグチャ、無謀な登山者は救助する必要ない。今年は格段にひどい、登山というより観光、国や県レベルで具体的な対策を、などなど。

 まさに、「これでいいのか富士山」の様相となってきました。

山梨県、静岡県による弾丸登山への警告

7月、8月の約2か月間に集中する登山者

 富士山の登山シーズンは短く、登山道の残雪が消える頃の7月上旬の山開きから、初冠雪を迎える前の9月上旬までの2か月余りです。この短い夏の最盛期に、雨の日も、風の強い日も、雷の危険がある時も、登山者が途絶えることがありません。
 山で発生する困った問題は、どこでも登山者の過剰利用(オーバーユース)に起因します。散乱ゴミ、し尿処理、遭難の多発、登山道の荒廃など、これらは特定の時期に、特定の山に、利用が集中することから発生します。

 富士山の問題は、過剰利用が根源となっています。それに拍車をかけているのが、弾丸登山です。今も昔も変わらず、安全、快適とはほど遠い登山状況が毎年繰り返されています。
 山頂付近の登山道は、傾斜がきつく落石のリスクも高いのですが、ご来光を求める人々で、夜間の狭い登山道は常に渋滞が発生しています。環境配慮型(非放流式)のトイレも、短期間に多人数に利用されるため、維持管理が大変な状況になっています。

富士山山頂、大勢の登山者を支える物資の調達。 ゴミやし尿の処理に、特殊仕様の運搬車が必要不可欠

ご来光を目的に、徹夜登山、夜間登山が常態化

 何故、このように30万人近い人々が富士山を目指すのでしょうか。今年、8月1日前後の3日間に実施された、静岡新聞と山梨日日新聞の合同調査によれば、富士登山の目的は、日本一の高峰の踏破、次にご来光、三番目が思い出づくりとなっています。約70%は山小屋宿泊、夜通しで一気に山頂を目指す弾丸登山者は約16%となっています。

 日本の最高峰を夜行日帰りで登山できることは、何よりも多くの人々を魅了します。富士山は、日本一の高山でありながら、登山者にとってはアクセスがとても便利な山です。
 ご来光(日の出)のタイミングにあわせて、徹夜登山、夜間登山が常態化。疲労困憊して、登山道脇や山小屋の周辺で仮眠をとる人や、高度順化が出来なくて、八合目付近でご来光を迎えて下山する人も多い状況です。

吉田口八合目の山小屋からのご来光。山頂に向かうことを諦めて、ここから下山する人も多い

子供、高齢者を含む初心者の多い登山者

 山梨県側の吉田口登山道では、五合目のバスターミナルから歩きはじめて、6時間から8時間程度で、標高3,776mの日本最高峰の頂に到着。小学生から80歳を超えるお年寄りまで、各年齢層にわたる老若男女の登山者が殺到する喧噪の山となります。
 富士山の場合、高齢者や子供が元気に山頂を目指すことを、昔から応援する気風があります。最高齢者は101歳の男性が記録しています。北アルプスや南アルプスの山域では、リスクが高いとして批判される登山行為が、富士山では昔から信仰の山として、世間が許容する背景があります。

 体調が悪い時、大雨や強風などの荒天時に、避難できる山小屋の存在も大きく影響しています。さらに、高山病や怪我などが発生した場合、応急処置のできる救護所が配置されています。このように便利で気軽なイメージが普及した登山環境のもと、富士山は国の内外を問わず、誰でも一度は登りたい山となっています。

富士スバルライン五合目。早朝にバスで到着した登山者で混雑

外国人の多い山、受け入れ態勢の整備が必要

 観光立国政策の推進による外国人の来訪が、円安の背景もあり、急速に回復しています。コロナ禍以前には、富士山登山の約3割は外国人と言われていました。今年はさらに増加傾向にあるようです。外国人は外貨をもたらしますが、トラブルも発生します。

 五合目に富士山観光に訪れ、そのまま登山に挑戦する外国人も現れ、迷惑登山やオーバーツーリズム(観光公害)の批判もでてきました。外国人を安全に受け入れるために、事前のルールとマナーの情報提供、現地における指導と多言語の標識類の整備などは、国や地方自治体の責務となります。

国のインバウンド政策で増加傾向にある外国人登山者。 日本の優れた自然と文化を求めて、今後も拡大することに

***「登山道」に関するご意見や投稿を募集します***

登山道法研究会では、この度、『めざそうみんなの「山の道」-私たちにできることは何か-』という報告書を刊行しました。頒布をご希望の方はこちらをご覧ください。

【連載】これでいいのか登山道 『めざそうみんなの「山の道」-私たちにできることは何か-』

また、このコーナーでも、全国各地で登山道整備に汗を流している方々のご寄稿なども掲載できればと思います。
この記事をご覧の皆さまで、登山道の課題に関心をお持ちの方々のご意見や投稿も募集しますので、ぜひご意見、ご感想をお寄せください。
送り先=gama331202@gmail.com 登山道法研究会広報担当、久保田まで

北岳からの富士山。登山の楽しみは山頂からの眺望。 美しい富士山をめざして、私たちにできることは何だろうか

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