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山の日レポート

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通信員レポート

海外トレイルレース参戦記:TDS〜Beaufortのモヤモヤを晴らす旅〜その1

2023.09.20

山の日通信員
認定NPO法人 富士山世界遺産国民会議
大庭 大

世界最高峰のトレイルランニングレースと言われるUTMBの中の1カテゴリーであるTDSというレースに出場して来ました。昨年も同レースに出場しましたが、フレンチアルプスに位置する町Beaufort(ボーフォール)92km地点でリタイア。レース続行を断念したその時から始まったTDSゴールまでの道のりを、1年を経て今年はフィニッシュすることができました。
TDS®は、 "Sur les Traces des Ducs de Savoie" (サヴォア侯爵の足跡をたどる)の頭文字が由来のレース。イタリア・クールマイユールをスタートして、アオスタ渓谷とサヴォワ渓谷を結び、ツール・ド・モンブランの村々や周辺の山々に触れながらフランス・シャモニーのゴールを目指します。モンブランの西側をぐるっと半周するコースで山岳要素が濃く、メインレースのUTMB170kmより距離は短く累積獲得高度も少ないものの、難易度はUTMBに勝るとも劣らないと言われています。
昨年は暑さに苦戦しましたが、今年は真逆の気象条件。ベーシックな必携装備に加えて、寒冷な天候時に適用されるcold weather kitの携帯が選手へ義務付けられました。天気予報では標高2200〜2300m以上は雪。コースの最高点は約2600mあり、夜中に降雪地帯を通過することが予想され、この時期としては極寒のレースとなりました。この気象状況から、T4 Bourg St Maurice からT5 Cormet de Roselendまでの山岳地帯の核心部を東側の谷から迂回するコースに変更となり、距離はオリジナルコースより延びて153.5km、累積獲得高度は若干少なくなり9316mとなりました。

シャモニーの町の中心部にあるゴール

イタリア・クールマイユールのスタート地点

レースは8月29日午前0時40分にイタリアのクールマイユールをスタート。T4 Bourg St Mauriceまでは関門時間がややきつめです。昨年はそれを意識して速く入りすぎ、その後の水切れと脱水に繋がったことを反省して、今年はスタートしてからT4までの52kmを昨年プラス45分の9時間35分で進みました。感覚的には、ここまでの疲労度は昨年比70%ぐらい。2年続けてエイドでサポートしてくれた阿部吉朗さん曰く、「去年の大庭さんは、ここでもっとギラギラしてましたね」。そう、去年はタイムに色気を出してしまいペースが上がったり、補給すべき水場を行列ができているからと素通りしたり、いくつかの積み重ねが失敗を招いたのです。同じ轍は踏まないよう、今年は抑えて抑えて進んで行くように意識しました。ギラギラしないで淡々と。

標高2591mのCol Chavannes周辺は雪が降る中を進んで行きます。

夜が明けると、前日から降ったと思われる雪で山々が白くなっていました。

T3エイド Col du Petit St Bernardへ向かいます。

標高が上がると、再び雪が降ってきます。

峠を越えてBourg St Mauriceの町に降りて、T4エイドに向かいます。

T4を出発すると、疲労度はそんなにないのに急に身体の動きが悪くなりました。寒さでエネルギーを消耗しているからなのか? T5 Cormet de Roselend手前の登りがめちゃくちゃ寒くて、この区間は一気に失速しました。T5で、エイド食のパン・チーズ・サラミとスープを補給し、さらに出発間際、チーズとピーナツを口に詰め込んでしっかりとエネルギー補給。そこからCol de la Sauceへの登りはさらに寒くて、コース中で一番雪が多い区間となりました。Col を越えて下りに入ると、それまでと空気が変わって、少し気温が上がった感じがします。T6 Gittazまで快調に進んで、この区間では順位を48番上げることができました。ここからT7 Beaufortまでの19.4km1138mD+は長い山越え区間。午後9時を回り、暗闇と霧でコースマーキングを探すのに苦労して、タイムを少しロスしました。昨年無念のリタイアを決めたBeaufortには、前回より32分速い23時間46分で到着。デポバッグに預けておいたカレーメシとボディメンテ、サポートスタッフに作っていただいたそうめんをしっかり補給して、ここから先の昨年は断念した未知の道へ備えます。(その2へ続く)

T5エイドを出発してCol de la Sauce(2311m)越えが雪が多くて一番寒いエリアでした。

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