山の日レポート
山の日インタビュー
「縦横無尽 雨宮節 沖縄と山を語る」#10最終回
2023.06.01
【山の日インタビュー】 この人に聞く「山」の魅力
雨宮節さん(登山家)は2年前までの12年間沖縄で暮らしていました。今年8月11日に沖縄で開催される山の日全国大会を盛り上げるために、雨宮さんに沖縄の山々そして自然の魅力を10回にわたって語ってもらいました。今回は最終回です。
鹿野 沖縄にははじめに思ってたより長くいたそうだけど、結局、箱根に戻ってきたわけですね。
雨宮 実は健康上の理由なんです。毎週少なくとも一回は大きな病院、沖縄なら那覇まで行かなきゃならなくなったんだけど、宜野座からだと公共交通機関がないんだよね。といって、もう自分で車を運転するわけにもいかない歳でしょう。で、戻るっていうか、住み慣れた東京周辺で、病院に通うにも便利なところを探した。ただ都心にはもう住みたくない。
やっぱり豊かな自然のあるところがいいって思った。沖縄で自然に囲まれて暮らすことのすばらしさに目覚めちゃったのかな。
雨宮 それであちこち探してもらって、箱根に落ち着いたんです。ここならみどりの山が目の前に広がっていて、毎日姿を変えるのが見られるじゃない。さすがに自分で歩き回るのはちょっとむつかしくなったけどね。小田原までのバスもあって、病院に通うのにもわりと便利だし。
鹿野 でも、沖縄のことは懐かしい・・・
雨宮 そう。だから今年の「山の日」の全国大会が沖縄で開催される、その関係で全国山の日協議会として話を聞きたいって言われたときは、ちょっとびっくりしたけど、すごくうれしかった。しかもその中心になってるのが梶さんたちだっていうじゃない。
僕らは同じころ、つまり鉄の時代にヒマラヤに行ってたわけで、自分では究極のヒマラヤ登山は縦走だと思ってたから、君たちのやってることには注目してたんだよね。
あれから40年以上たって、お互い歳をとって、まるで違うことについてだけど、また会ってなにか一緒にできるって、すてきだなって思ったわけよ。
鹿野 ほんと、そうですよね。で、その山の日の全国大会が沖縄で開催されることについて、雨宮さんが今、一番言いたいことってなんなんでしょう。
雨宮 繰り返しになるけど、沖縄の人たちには、皆さんのすぐ身近にある自然のすばらしさにもっと注目して、誇りを持ってもらいたいってことだね。僕みたいな大都会で育った人間からすれば、それってとてつもなく素晴らしいものなわけよ。それも観光客が押し寄せる有名なリゾートビーチなんかじゃなくて、むしろごく身近な海岸や畑の周りの原っぱや丘みたいなところの自然がね。
雨宮 世界自然遺産になったやんばるだってそうなんだけど、地元の人達には身近すぎて、かえってそれがどれだけすごい貴重なものなのかってことに、充分には気づいていないみたいな気がする。
山の日の全国大会が沖縄で開かれる機会に、あらためてそこに気づいてもらう、開催の最大の意味はそこにあるんだと思う。
鹿野 僕たちも国民の祝日としての「山の日」は、登山の日じゃないんで、国土の大半を占める、森林はじめとする、広い意味での山の自然と、それを創り、守ってきた人たちのことを考える日だって言ってきたわけですけど、その意味でも沖縄で大会があるのは意味が深いし、雨宮さんにもまだまだ力を借りたいと思います。
雨宮 なにをどれだけやれるかわからないけど、やれることはなんでもやるよ。沖縄には親しくしてもらった人がいっぱいいるしね。そういう人達とつながりをつけることを含めて、まだまだできることがありそうな気がする。
鹿野 長時間ありがとうございました。今回は一応これで終わりですけど、次のシリーズも考えたいので、そのときはまたどうぞよろしく。
雨宮 僕のほうも久しぶりに話が出来て、すごく楽しかった。じゃ、またそのうち。
聞き取り、構成:鹿野勝彦(全国山の日協議会 評議員)
(2022年11月21日 雨宮さんの自宅にて聞き取り)
(あまみや たかし)
1936(昭和11)年生まれ。
1960年代日本での積雪期岩壁登山、そして1970年代にヒマラヤの山々でバリエーションルートからの登攀を競った「鉄の時代」とともに生きてきた登山界のレジェンドの一人です。
2年前までの12年間沖縄に住み、沖縄県山岳・スポーツクライミング連盟の会長を務めていました。
沖縄大会は、生物多様性に富んだ地域として世界自然遺産に登録された「やんばる」および「西表島」が開催地です。
▲大会期間:令和5年8月10日(木)~ 令和5年8月11日(金・祝)まで
▲開催地 :沖縄県国頭村、大宜味村、東村、竹富町
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