山の日レポート
通信員レポート
「ウォルター・ウェストンの南アルプス」講演の模様
2022.06.06
「ウォルター・ウェストンの南アルプス」の演題で山梨支部顧問・内藤順造会員が南アルプス市櫛形生涯学習センター内の「あやめホール」でパワーポイントを使って講演した。講演に先立ち南アルプス市立図書館館長保坂なおみ氏から講演会の趣旨や講師の紹介などがあった。
南アルプス市立中央図書館は、「ふるさと人物室」を平成28年にオープンしたが、その目指すところは『近代前後に活躍した山梨県南アルプス市ゆかりの人々を紹介し、「ふるさと」の魅力を再発見してもらうこと』で、今回の講演は、この「ふるさと人物室」の第 11 回展示『南アルプスに登った近代登山の父Walter Weston(ウォルター・ウェストン)』に併せた企画で講演依頼があったものである。
展示会場の「ふるさと人物室」および講演会場の「あやめホール」はともにレンガ造りの瀟洒(しょうしゃ)な櫛形生涯学習センター内に併設されており、あやめなどの貴重植物の宝庫・櫛形山山麓の風光明媚な地に在る。
講演では、宣教師として来日したウエストンが、明治35年(1902年)8月に外国人として初めて北岳に登ったこと。その行程は杖立峠から五葉尾根を経て野呂川に下って広河原から登ったこと。明治37年(1904年)7月に地蔵岳のオベリスクの岩峰に初めて登ったこと。このほか、ドノコヤ峠(奈良田峠)を越えて奈良田へ入り早川谷を下ったこと。黒戸尾根を経て甲斐駒ヶ岳に登って戸台へ下ったこと。地蔵岳から2度目の北岳に登り、間ノ岳まで足を伸ばしたこと。野呂川を遡上して大仙丈沢を詰めて仙丈ケ岳山頂に至ったこと等々、ウエストンが精力的に広く南アルプスを探索した行動についての講演であった。
さらに、ウエストンより前に来日したアーネスト・サトウ(JAC 第6代会長武田久吉の父)の歩いた登山道のほか、山間の人々が野呂川流域での狩猟のために利用した道、さらには早川の山峡地域の集落どうしをつなぐ峠道が、交易交流など生活のための重要な道だったことなどについても言及された。
時あたかも JAC 創立120周年記念事業として、現在われわれ山梨支部が取組み調査中の「山岳古道」にも関連関係のある内容で、実に有意義な講演であった。 (山梨支部 北原孝浩)
令和4年6月2日 日本山岳会山梨支部 支部長 北原孝浩様の寄稿文 講演「ウォルター・ウェストンの南アルプス」より転載
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