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山の日レポート

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通信員レポート

【連載:登山道保全活動2】~発足から10年国内では唯一の取組~

2022.02.25

全国山の日協議会

環境省羽黒自然保護官事務所 風間さん

今年の第6回「山の日」全国大会開催地の山形エリアを担当する環境省羽黒自然保護官事務所の風間さんから、朝日連峰・飯豊連峰の登山道保全活動について綴っていただきました。

~ここから~
飯豊連峰保全連絡会・朝日連峰保全協議会の会員は、登山者であり山を愛する本人である山岳関係者、国である林野庁や環境省、10を超える数の県市町村の行政関係者、登山道保全を学術的な観点から考察する学識者といったように、各方面から集まった会員で構成されている。広範囲な関係者が連携し、様々な立場で登山道を保全していこうと始まった取組なのである。このように、広範囲な関係者が一堂に参集している登山道保全の取組は、国内では唯一と言っても過言ではないだろう。その中でも、環境省羽黒自然保護官事務所は発足当時から事務局として関わりを続けている。

飯豊連峰保全連絡会・朝日連峰保全協議会の取組は、前年度の冬に次年度の計画を検討するところから始まる。目指すところは次年度の夏に行う登山道保全作業であり、そこに向けて前年度の冬から会議の開催や保全技術の向上、会員の情報交換と意思疎通など、保全活動が無秩序なものにならないように広範囲な関係者が様々な立場で取組を進めている。

溝のできた登山道

登山道の保全作業には、ヤシ土嚢やヤシ繊維、ヤシロールなどの資材が使われる。令和3年度は、これらの資材を一般の登山者の協力を得て梱包し、そして作業地までの運搬までも一般の登山者の協力を得て行ったのである。登山道を使う人と直す人は同じでなければならないという考えの基、活動は行われている。飯豊連峰と朝日連峰の登山道を直したいという、登山者のまっすぐな気持ちがこの取組を動かし続けているのである。保全作業はあくまでも自然が持っている治癒力を促す手助けという位置付けであり、自然の力を利用して数年かけて段階的に作業をしている。このようにして、取組の発足当時から毎年少しずつ、気長に保全作業を行ってきた。実は、山岳域での登山道保全の方法は、日本では未だに確立していない。そのため、作業箇所を毎年調査し、どのような工法が有効なのかを探りながら試行錯誤を重ねて保全作業をしている状況である。そして、令和3年度、今までの保全作業で蓄積してきた工法や登山道保全の考え方を整理した登山道保全マニュアルを作成することができた。本マニュアルは今後、登山道保全作業の参加者の教本となり、参加者の技術の向上やさらによりよい工法を探すための重要な土台となっていくことだろう。

水によって削られているのがわかる

活動を重ねていくことで、さらなる課題も見えてきた。発足から10年以上が経過し、さらに新型コロナウイルス感染拡大を受けて、本取組を取り巻く状況も少しずつ変化してきている。登山道を保全するという当初からの目的をより高く掲げながら、今の時代に順応した活動を進めていく転換期にさしかかっているのかもしれない。

飯豊連峰の登山道

このように、磐梯朝日国立公園の飯豊連峰・朝日連峰では、関係者それぞれが様々な立場で連携し、地道ではあるが確実に登山道を保全していこうと取組を行っている。自然というのは様々な外的要因が複雑に絡み合って成り立っており、変化も非常にゆっくりである。そのため、保全作業をしてから登山道が回復するまでには気が遠くなるような時間を要する。10年後かもしれない。100年後ということもあり得る。飯豊連峰・朝日連峰の登山道が回復する日を夢見て、今日も飯豊連峰・朝日連峰を愛する皆が取組を続けている。

保全活動の成果が現れている

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