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山の日レポート

山の日レポート

山の日インタビュー

「アウトドア」をすべての人に伝えたい

2022.01.01

全国山の日協議会

大橋未歩さん(フリーアナウンサー)

【山の日インタビュー】 この人に聞く「山」の魅力-その1 

「アウトドア」をすべての人に伝えたい
フリーアナウンサーの大橋未歩さんにお話をお聞きしました。

山は「いつも身近にある遊び場」でした

*大橋さんのプロフィールを拝見しますと、「幼少期から山が遊び場だった」と記されていますね。お生まれになった神戸での体験かと思いますが、どんなお子さんだったのですか。

はい、山は「いつも身近にある遊び場」という感じでした。当時住んでいたマンションのすぐ後ろが、皆さんご存知の須磨の山々の登山口で、鉄拐山、旗振山、鉢伏山などが連なっています。学校の遠足などでも登りました。
板宿八幡神社の近くに祖父の家がありまして、山のことや自然の楽しみも色々教えてもらいました。竹林で筍を掘ったり、大きな楠木の枝でターザンごっこをしたり…。なんと言いますか、「すべてが別世界で自由自在」という感覚でしたね。
山に入れば、馬の背と呼ばれる岩肌がむき出しになった危ない所もあるのですが、たくさん転びながら、木の枝で足を切ったりしながら、そうした経験を重ねるなかで、自然に創造性が養われたのだと思います。家でゲームとかした記憶はありません。ままごと遊びなどもしましたが、木の葉っぱのお皿に木の実を盛ったり、といった感じでした。

「先ず一歩」、「とりあえず前に」という気持ち

*アメリカのジョンミューアトレイルを歩かれた際のお話を読んで、「実に美しい描写で体験を語られるなあ」と感動しました。濃厚な自然体験があったからこそ、そうした表現もできるのだろうと思うのですが。

2018年にジョンミューアトレイルをセクションハイクしました。それまでも富士登山や、雲取、瑞牆、高尾から陣馬などの山歩きは経験していましたが、アメリカでは、また違った感動を味わえました。
新婚旅行だったのですが、夫が学生時代にアラスカに出かけていたりと、アウトドアが大好きでしたので、計画もすべて立ててくれました。でも許可をとるのは大変でしたね。登山口によっては1日に45人までといった入山者数の制限もありますし。
重さ10㎏ほどのバックパックを背負って、1日平均8時間歩くんです。標高が3000mを超える所もありますし、日に日に疲れもたまつて来て、歩けなくなってしまいます。ようやくテント場に着いても、めんどうくさくて夫にすべてを託してしまう。長い行程のなかでは、けんかになったこともありましたが、苦しかった思い出も、今ではとても愛おしいです。
この時の経験から、例え苦しくても「先ず一歩」、「とりあえず前に」という気持ちが大切なことを学びました。空の青さも違うし、スコーレイクの鮮やかな水の色も忘れられません。「気に入ったところが家(泊まり場)になる」という点も魅力的でしたね。日本だと当然テント場も限定されてしまいますが。
でも日本の山も好きですよ。昨年の秋、ほんとうに久しぶりに、丹沢をヤビツ峠から塔ノ岳を経て大倉尾根を降りるというコースで、夫といっしょに辿りましたが、まっ白に雪化粧した富士山を見て、「自分は富士山がこんなに好きだったんだ」と改めて実感しました。雪の白さ、紅葉のグラデーション…、山ってご褒美がいっぱいですよね。

ジョンミューアトレイルにて

丹沢では富士山に感動

私たちはこうした循環のなかで生きている

*2018年にご病気なさった際の心の変化として、「循環する自然の偉大さ」を感じたり、「自然のなかに溶け込みたい」といったことを語っていらっしゃいますね。私たちも「山の日」を語る時に、山、川、海、空とつながる循環や、歴史や文化も含めて考えることを大切にしています。

脳梗塞を発症してしまいまして、8か月ほど仕事を休んで兵庫の家族のもとで療養しました。その間、キャリアは完全に停止してしまい、まったく「無」の状態ですから、とても落ち込んでいました。
そんなある日、父と一緒に山を歩く機会がありました。須磨浦公園から、まあ登山というよりは犬の散歩程度だったのですが、「一緒に行こう」と誘われて出かけました。
2月でしたので樹々の葉もすっかり落ちていまして、たくさんの蕾が見えたんです。「そうか、やがて、この蕾が花を咲かせるんだなあ」。やがてその花も散ってしまい、さらには葉も落ちてゆく。そうなのです。今は蕾が栄養をため込んで、エネルギーをたくわえている時。「私も同じなんだ。今しかできないことをやっておこう」。そう思うと心が落ち着きました。私たちはこうした循環の中で生きている。体内の血液の流れなんかも同じですよね。

郷里の須磨の山で

「アウトドアをすべての人に」

*大橋さんは、広く皆様に考えや気持ちをお伝えできるアナウンサーというお仕事をしていらっしゃるわけですが、今後、発信してゆきたいことは何ですか。

「アウトドアをすべての人に」。それが一番お伝えしたいことです。私は神戸の出身ですので、15歳の時に阪神淡路大震災に遭いました。3週間お風呂にも入れず、川で水を汲んで来て暮らすような日常。その水でトイレも流し、停電が続きましたので、夜はローソクの明かりで過ごす…。
「どうしたら心穏やかな生活ができるのか」と考えた時、アウトドアの体験から学べるもの多さに気づきました。例えば火の熾し方や、携帯浄水器の使い方なんかも、キャンプの経験があれば自然に身に着きますよね。
日本は地震なども多い災害大国です。「自分の命、そして大切な人の命をどう守つたらいいのだろうか」。そうしたこともアウトドアでの体験から学べることが多いと思うんです。土の匂い、風のそよぎ、水の流れる音、空の色…、自然体験を通じて得られるものは本当に沢山あります。

*今日はお忙しいなか本当にありがとうございました。ぜひ「山」の素晴らしさ、アウトドア体験を通じて得られる魅力を、これからも、ぜひ皆様にお伝えいただければと思います。


聞き手=久保田賢次(全国山の日協議会 広報担当)
(2021年12月23日 東京半蔵門、ダイヤモンドホテルにて収録)

(おおはし みほ)
1978年兵庫県神戸市生まれ。上智大学卒業後、2002年、テレビ東京入社、多くの番組で活躍する。2013年、脳梗塞を発症して休職を余儀なくされるが、同年9月には復帰。2018年3月からフリーアナウンサーとして活動を始める。現在は『5時に夢中!』(TOKYO MX)などに出演中。

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