
山の日レポート
通信員レポート
岐阜県の山へようこそ(その2):美濃地方の山岳
2026.05.01
第10回の山の日全国大会が8月11日に岐阜県で開催されることを控え、岐阜県の山の概要とその魅力やポテンシャルをご紹介するその2は、美濃地方の山岳です。
岐阜県は、日本百名山10山を含め、公益社団法人日本山岳会編の日本三百名山が25山を数えます。岐阜県の山岳というと、飛騨山脈(北アルプス)や、白山連峰のある飛騨地方だけがイメージされがちですが、美濃地方も濃尾平野の背後に広大な山岳地帯を抱え、日本百名山の2山(恵那山、伊吹山)を含め、日本三百名山を7山(小秀山、奥三界山、鷲ヶ岳、大日ヶ岳、野伏ヶ岳、能郷白山、冠山)擁しており、長良川、木曽川、揖斐川などの水をはぐくんでいます。山と清流は、切っても切れない関係です。

岐阜県美濃地方の平野部からもよく眺められる3千m峰として、岐阜県飛騨地方と長野県木曽地方にまたがり木曽川の源流となっている御嶽山(3067m)があります。その15㎞ほど南から美濃地方の山々がはじまります。
美濃地方の東側は、長野県との県境になり、小秀山(1982m)を最高峰とする阿寺山地の山々が連なります。この山域の美濃側は、信州側の木曽に対し、「裏木曽」とも呼ばれ、日本有数のヒノキの産地となっており、伊勢神宮の式年遷宮の御用材もこの300年ほどは、この一帯から伐り出されています。
木曽川の支流付知川や、飛騨川の支流白川などの源流部となっており、滝や渓谷も多く、御嶽山や木曽山脈などが間近に展望できる山々があります。

画像:小秀山からの御嶽山
木曽川を木曽川を挟んでその南には、「中央アルプス」とも呼ばれる木曽山脈の南端部が岐阜・長野県境部まで延びており、日本百名山の恵那山(2191m)が、県境部の最高峰、そして美濃地方の最高峰となっています。その北東鞍部に、古代の官道東山道第一の難所として知られた神坂峠が通り祭祀遺跡が残ります。旧街道の面影を伝え、外国人観光客にも人気な中山道の馬籠峠もこの山域を越えていきます。

画像:湯舟沢山からの恵那山
美濃地方の西側は、福井・滋賀・三重県と県境を接しており、北の福井県境は、白山・能郷白山の名を取った両白山地が続き、そのうち白山山地(加越山地)の南部が美濃地方までのび、残雪期の山として全国から登山者を集める野伏ヶ岳(1674m)や、白山登拝の古道である白山美濃禅定道の最初のピークである銚子ヶ峰(1810m)などがあります。また、大日ヶ岳(1709m)などは、東海北陸自動車道から近く、豪雪を活かした大規模なスノーリゾートが開発され、「奥美濃」は、中部地方、関西地方のウインタースポーツの主要エリアに成長しています。

画像:野伏ヶ岳からの白山
両白山地のうち越美山地の最高峰は能郷白山(1617m)で、山麓の本巣市根尾能郷の白山神社は、古い形式の能や狂言が今も演じられています。そのほか、冠のような岩峰を突き立てる冠山(1256m)や、標高約1000mにある雨乞い伝説で知られる夜叉ヶ池などは、関西からも近いので、広く登山者や観光客を集めます。特に冠山は、国道417号線の冠山トンネルが抜け通年アプローチできるようになったので、日帰りで手軽に冬山を楽しめる山として人気を集めつつあります。揖斐川やその支流根尾川の水源ともなっている山域で、徳山ダムは総貯水量が日本一です。
滋賀県の県境には、日本百名山の伊吹山(1377m)を最高峰とする伊吹山地があります。伊吹山は冬季には日本海側からの季節風の通り道となるため豪雪の山として知られ、1927年2月14日には世界最深積雪記録となる積雪量1182cmを記録しています。濃尾平野からよく眺められ、岐阜県、滋賀県、愛知県などで校歌にも歌われる、地域のシンボルともいうべき山です。
三重県の県境に入ると、断層活動でできた養老山地が濃尾平野に面して立ち上がります。最高峰の笙ヶ岳(908m)や、日本の滝百選・菊水泉として名水百選に選ばれている養老の滝で知られる養老山(859m)などが連なり、木曽三川がゆったり流れる濃尾平野のパノラマが展望できます。
以上の東西県境部の山々の間に、岐阜県の南東部から愛知県の東部にかけて美濃・三河高原が続き、岐阜県側では二ツ森山(1224m)が最高峰です。また、濃尾平野の木曽川および長良川の中流域に300m前後の山が帯状に続き、織田信長の岐阜城が置かれた金華山(329m)が長良川河畔にそびえます。

画像:秋冬異なる表情を見せる冠山
私は、今まで日本山岳会編の日本三百名山をはじめ、北は北海道の利尻・礼文島の山から南は沖縄県の石垣島の山まで、全国各地の山を千山近く登ってきましたが、全国的な視点でみても、飛騨の山だけでなく美濃の山も、さまざまな個性を持った魅力ある山が多いことを実感しています。その魅力を3点挙げると、まず1点目は、四季を通じて日帰りで手軽に登れる山でも、飛騨山脈、御嶽山、白山山地、木曽山脈や、木曽三川の流れる濃尾平野の大パノラマを楽しめる山が数多くあることです。美濃の山は、例えば飛騨の山や、「鈴鹿セブンマウンテン」として鉄道会社やマスコミがPRしてきた鈴鹿山脈などに比べて、あまり知られていないのが実情ですが、中京地方や関西地方に接しており、そのポテンシャルは高いものがあります。

画像:富士見台(1739m)から湯船沢山(横川山:1620m)に向かう登山道、奥は御嶽山
2点目は、冬の雪、夏の雨がはぐくんでくれる豊富な水のおかげで、美濃の山では、長良川やその支流板取川などの清流、多くの滝を秘めた渓流や沢などと随所で出会えることがあります。他地域の、特に低山では、清らかな渓谷や沢を味わえる山が意外に少ないことに気付かされます。山頂に立つことばかりでなく、渓流や豊かな水にはぐくまれた森を楽しめるルートが多いことも、美濃の山の魅力のひとつです。
3点目は、福井・滋賀県境の山を中心に、千m台の山でも、北アルプスの3千m峰と遜色ないほどの豪雪に親しめる点です。ウインタースポーツについては、交通網の発達もあり、すでに「奥美濃」が中京地方および関西地方において、確固たる地位を築いています。登山においても、日帰りも可能で、高峰に比べると天候が安定しており、しかも飛騨山脈や白山連峰のパノラマを楽しめる美濃の山は、積雪期登山の楽しみを多くの方に味わってもらえるポテンシャルを持っています。積雪期登山や3千m峰をめざす雪上訓練などについて、その魅力や安全登山に関する情報発信と、ガイドツアーの充実、駐車場など受け入れ態勢の整備を行えば、外国人観光客も含めて広く登山者を集めることができるのではないでしょうか。

画像:野伏ヶ岳山麓、和田山牧場跡での雪上訓練
2回に分けて、飛騨地方と美濃地方の山岳の個性とポテンシャルをご紹介してきました。しかし、県南端部の濃尾平野周辺に人口が集中していることもあって、岐阜県民にさえその魅力が十分認知されておらず、情報発信も十分とはいえないため、そのポテンシャルを十分活かしきれていない実情があります。その3では、岐阜県の山の課題を整理し、より多くの登山者や観光客に岐阜県に訪れていただき、山里のにぎわいを取り戻すにはどうしたらいいか、考えていきます。
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