山の日レポート
通信員レポート
森のようちえんクスクスの活動
2025.06.10
はじめまして、2010年より東京都小金井の自然をフィールドに園舎を持たずに活動をしている森のようちえんクスクスです。
「森の幼稚園」は1950年代のデンマークで母親が子どもを連れて毎日森へ出かけたことがきっかけで始まったと言われています。
森のようちえんクスクスも今から16年前、1人のお母さんと子どもが自然の中で過ごした時の思いがきっかけで始まりました。
そのきっかけについて、代表・井上は以前受けたインタビューでこのように語っています。
「1歳の息子が大きな幹に力づよくつかまりだちをし、大きな空の下、風の中で、葉っぱで遊び、母である私にいろんな表情を見せてくれました。こんなに豊かな気持ちになる子育てに、仲間がいればとてもいいなぁと思い、森のようちえんを始めました。
子どもたちのリズム、季節の移ろい、自然の時間・・・そのゆるやかな流れの中で子育ての一歩をはじめ、そのような考えに共感してくださる方々がつながっていき、今に至ります。
大人も子どもも、外側の情報ではなく、人が本来もつ自然、環境としての自然を感覚的に味わいながら、育みあっています。」
では実際に、デンマークと違い壮大な森もない小金井市で、園舎も持たずに、どのような活動をしているのか?
とある一日から、森のようちえんクスクスの活動の一端を紹介させていただきます。
一日の始まりと終わりに輪になりお話を聞き合います
森のようちえんクスクスの一日は朝の会から始まります。今日のメンバーで顔を合わせ、お休みの子を確認したり、子どもも大人もみんなに聞いてもらいたいことが話せます。そして、今日は公園内のどこで遊ぶかを子どもたちが決めるのも朝の会です。多数決ではなく、一人ひとりの意見をもとに決めます。必要に応じて保育者が仲立ちをしたり、子どもたちが自分たちで決めることのお手伝いをします。
この日は、意見がふたつに分かれて、なかなか決まりませんでしたが、結果が早く出ることは重要ではありません。大切なのは自分のこととして取り組んでいるかです。この日はジャンケンで行き先が決まりました。思い通りにいかない結果に泣く子もいたし、ぐっとこらえて気持ちを切替えていく子もいました。結局はどこに行っても楽しめる子どもたちですが、その瞬間に感じた気持ちや、そこからまた前を向いて動き始めるまでの一連は、その子の根っこを太くしてくれることでしょう。
時にはアカガエルに出会えることも
今日決まった遊び場は「かえるのばしょ」。子どもたちが名付けた場所です。「かえるのばしょ」は公園内でも木々が多く、ひっそりとした場所です。池があるので、春の終りには、運がいいと爪先ほどの小さなカエルがあちらこちらに飛び跳ねています。
子ども達は、つい最近、別の公園で活動した時にオタマジャクシに足が生えて、カエルになっていたことを見ていたので、今日ここに来ればカエルに会えるかも!と思い描いていました。
毎年楽しみな桑の実
カエルだけでなく、桑の実が段々と色づいていくことや、一面に広がるたんぽぽ野原が綿毛に変わっていく様子など、日々変化する季節の移ろいを子どもたちは感覚に取り込みながら成長していきます。
一面のたんぽぽ野原
この日は残念ながら、「かえるのばしょ」でカエルに会えることはありませんでした。けれど、子どもたちは引きずる様子もなく、遊び始めます。
子どもたちは自分の背丈を越えるほどの枯れ枝を運んで、家づくりを始めました。
子どもたちと顔なじみの公園利用者の方から伺った話だと、公園整備をされている方たちが、子ども達が遊べるように、地面の枯れ枝をある程度残して整備してくれているのだそうです。
大自然ではなく、都市の中にある自然だからこそ、人の思いにも触れられたり、同じように公園で過ごされている方たちも気持ちよく過ごせるよう自分がどうしたらよいか、子どもと一緒に思いを膨らませる機会に恵まれます。
自分たちで作ったおうちでお弁当
伝え忘れていましたが、この日は保育のサポートをしてくれるお父さん1名とお母さん1名も一緒に過ごしました。
森のようちえんクスクスは「共同保育」というスタイルの園であるため、お母さんもお父さんも保育に参加します。(こちらで使用している写真の多くもお母さんやお父さんが保育中に撮影してくれた写真です。)
この日参加してくれたお父さんは、朝の会や、道草を楽しむ子ども達の足取り、お弁当の片付けや身支度の様子など、実際に目にしたことから、多くを感じ取ってくれていました。こうして、保育の場と家庭とが繋がり、その子の育ちにとって必要なことを一緒に考えていけることは共同保育の良さの一つだと思います。
また、森のようちえんクスクスでは子どもたちのリズムを大切にしていますが、まるで全てを子どもの好き勝手に任せるということではありません。自然の時間の中でも季節や、一日の終りが必ずやってきます。限りがある中で、今の自分にとって大切なことを取捨選択できる力を培えるよう、保育者は子どもの段階に応じてサポートや促しを行います。
そして、それを行うためには、大人がよく子どもを観ることが欠かせません。カレンダーや予定表、時計を見ていては見逃してしまう大事なことを、常に目の前の子どもと、そして天気と相談しながら森のようちえんクスクスの一日一日は成り立っています。
おわりの会の絵本の時間
団体名:森のようちえんクスクス
登園日・保育時間:週4日・9:30〜13:30 (春休み、夏休み、冬休みあり)
※2才児は週1〜2日の保育となります。
活動場所:小金井市内の公園など
問合せ先:ホームページ問合せフォームよりお問合せください
RELATED
関連記事など