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山の日レポート

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山の日インタビュー

【連載⑭】東奔西走 ダルマ・ラマ 富山からネパールと日本、世界をつなぐ

2025.02.15

全国山の日協議会

第14回 続編をお届けします

鹿野   「今回は、ネパールから働く人を呼びたいという中小企業の方が何人か同行されたそうですが、それはなにが目的だったんですか」

前回(2023年)のネパール訪問でも同様の趣旨で交流をしてきた

ダルマ  「ご存じのように、いま日本には約10万人のネパール人がいるんですが、その多くは技能実習生とか、日本語を学ぶ専門学校生とかの資格で来ているわけです。そういう人達は、ネパールにある仲介機関を通して来日資格を取るんですが、なかには仕事の内容や待遇とか、学校の教育内容やその後の進路の可能性なんかについて、充分な情報を知らされず、ただ日本に来れば、先進的な技術を身につけたり資格がとれるとか、ネパールでは考えられないほどお金が稼げるとかっていう期待をもって、なかには大きな借金をして来日する人も少なくない。でも、実際に日本に来ると、低賃金で長時間の単純労働をさせられて、期待を裏切られる。留学生であっても、アルバイトに追われて、ほとんど勉強ができないとか。結果、日本について持っていたいいイメージもすっかりなくしてしまう。悲しいことです。」
鹿野   「そういったことはネパールだけではなく、アジアのいろんな国との間でも問題になっていて、いま、受け入れ制度の変更や、それにともなう日本語教育のありかたも検討が進められているわけだけれど、でも問題は続いているわけですよね。」
ダルマ  「はい。私自身はそれを直接どうにかできるような立場にはないけれど、ネパールから人を呼びたいという方たちに、まず現地の状況を自分の目で見て、理解していただくのが前提だと思っています。で、今回は短期間ですが、私たちに同行して、いろんな交流行事にも参加してもらいました。どこまで目的が達成できたかはわかりませんが、できることから少しずつやるしかありません。」

前回(2023年)のネパール訪問でも同様の趣旨で交流をしてきた

鹿野   「現在、富山県内には約300人のネパール人がいて、その大半は、技能実習生や日本語学校、専門学校などの留学生なわけですね。」
ダルマ  「はい。私が日本に来た1980年代のころは、富山県内にはネパール人なんてごく少数で、良くも悪くも珍しがられていたんですが、いまは数が増え、貴重な労働力として期待される反面、問題も多くなりました。」
鹿野   「そうでしょうね。特に地方の場合、コミュニティ自体が小さいから、大都市圏とはまた違う問題が生じてくる。」
ダルマ  「そうなんです。いま、富山県にいるネパール人の多くは、小さな企業や学校で、ふだんは決まりきったスケジュールに従って仕事をしたり、授業を受けたりするだけで、経済的にもあまり余裕がないから、ふだんはいろんなところへ出かけたり、地域の日本人の方やほかのネパール人とコミュニケーションを持つ機会なども、あまりありません。なにしろここいらは車社会ですけれど、ネパール人の多くは車なんて持っていないから、休みの日でも、遊びに行くどころか、スーパーで簡単な買い物をするのにも苦労する。だから外出もせず、一日中スマートフォンを見て過ごすという人も少なくない。」
鹿野   「なるほどね。だからダルマさんみたいに、長いこと日本に住んで、いろんな経験を積んできた人のサポートが大事になってくるわけだ。」
ダルマ  「自分は日本人と結婚してきたから、立場はずっと恵まれていたわけですが、それでも来たばかりのころは寂しかったし、困ったことも多かった。だからネパールから来たばかりの人の気持ちはよくわかる。いっぽうで日本の、特に地方の方は、最初はネパール人、というか、外国人と接した経験はあまりないから、どちらかといえば遠慮しているわけだけれど、でもこちらから近づいてゆけば、とても親切にしてくださるじゃないですか。多分、東京や名古屋みたいなところでは、なかなかそうはいかないんじゃないか。」
鹿野   「たしかにそれは言えますね。最初にうまくつながりができれば、あとは地域社会に受け入れてもらうのも案外たやすい。ただし、日本語である程度とコミュニケーションがとれれば、ということが前提になるけれど。
それで富山ネパール文化交流協会を立ち上げたのは、たしか2015年のネパールでの大地震のあとだったわけですね。」
ダルマ  「前にもお話ししたように(注)、富山ネパール文化交流協会はもともと大地震の被災者支援の受け皿として作ったわけですが、それにかかわってくださった富山県内の方たちと、富山県在住のネパール人のつながりを、地震の支援のあとも継続的に発展させてゆきたいと思ったんです。」

(注) 「東奔西走」第5回参照
聞き取り  2024年11月30日 葉っぴーファーム
構成 鹿野勝彦



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