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2024年山の日アンバサダーメッセージ

2024.12.26

山の日アンバサダー
ライター 登山ガイド
柏澄子

 今年の秋。聡明で勇敢で、頼もしい友人たちとダウラギリサーキットに行ってきました。
 ダウラギリはネパール西部にそびえる標高8167 m、世界第7位の高峰です。そのダウラギリのすそ野をぐるっと一周するようにトレッキングルートがあり、これを「ダウラギリサーキット」と呼びます。私たちはここを、バッティと呼ばれる山小屋のようなところやテントに泊まりながら12日間かけて歩きました。4748mのダウラギリベースキャンプまで登ったのちに、5000m半ばの峠をふたつ越えるなかなかハードなルートですが、ダウラギリが重量感のある大きな山であることを、身をもって実感できたよい旅でした。

 標高4000m近い地でヨガをしたり、ハニーハンターから新鮮なはちみつを買い、毎朝のチャパティにたっぷり塗って味わったり。ありったけのウエアを着こんでダイニングテントに集まりお喋りしたこと、息を切らせながらゆっくり歩を進めて越えた5000mの峠、荒涼としたヒドゥンバレーの光景、最後の日に宿泊したヤクカルカからは、ニルギリがものすごくかっこよくて、山から下りるのが名残惜しかったこと。色んなことがありましたが、泣きたいほど心に刻まれたシーンがふたつありました。
 ひとつは、高所順応のために近くの丘に登ったとき。誰ともなく、石を積み始めケルンを作りました。秋でしたが、可愛らしい花がドライフラワーのようになって残っていて、ケルンに飾りました。交わす言葉は少なかったけれど、私たちの友人たちのことを考えながら、それぞれの心の中には色んな思いがあったと思います。
 もうひとつは、徒渉をしたとき。川の流れを前に誰が言いだしたわけでもなく、みながためらうこともなく登山靴を脱ぎズボンも脱ぎ、パンツ一丁になりました。メンバーの中にはこんな長い登山は初めてだった人もいるし、徒渉が初めてだった人もいます。けれど、サーダーが試しに渡った様子を見て、これは脱がなければならないと即座に判断したのです。氷河から流れ出るキンキンに冷たい水、激しく強い流れ、絶対にこけられません。なんて頼もしいメンバーなのだろうって思いました。

 12日間の山旅で、たいへんだったときも伸び伸びゆったりした時間もあったけれど、互いを思いやりながら、雄大な自然のなかで過ごせたことが、なんだか誇らしいです。大人になってからできた友人達とこうやって山や旅を楽しめることに、ありがとう!って心の底から思っています。

 「思うようにいかないときも、嬉しいことも悲しいことも辛いことも悔しいことも、すべてひっくるめて人生は素晴らしい。
 年の瀬をひかえて、大切な人と一緒に過ごす人も、愛する人を失った人も、会えないでいる人も、愛を感じることができますように。」



 8年前の今日、こんなメッセージをマウイの友人が、山の人たちが悲しみに暮れていたときに送ってくれました(以前山の日のHPでも紹介しました)。私もこんな心持ちになりたいと思い、いつも心に留めています。

よいお年をお迎えください。

山の日アンバサダー
柏澄子

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