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山の日レポート

山の日レポート

山の日インタビュー

連載⑨ 東奔西走 ダルマ・ラマ 富山からネパールと日本、世界をつなぐ

2024.01.01

全国山の日協議会

第9回 西ネパールでソバを作る

鹿野  「今日(2023年11月29日)は、ほぼ1年ぶりにネパールへ行って帰国したダルマさんに、いろいろな事業の最近の進展具合などをうかがうためにお邪魔しました。今回のネパール行きは、なにがおもな目的だったんですか」
ダルマ 「会社としての葉っぴーファームでは、いまネパールで、エゴマのほかにソバの生産組合を立ち上げ、来年から本格的に始動しようとしてるんですが、その準備や打ち合わせが一つ、Nepal Japan Cultural Exchange Associationの活動の推進が一つ、それとあと一つがネパールでなにか新しい事業展開をしようとしたり、ネパールから人材を確保したい日本の中小企業の方たちに同行して、ネパールでの起業やネパールからの人材送り出しを担う組織とのマッチングをすること、というかそのきっかけを作ること、その三つでした」                         
鹿野  「ところがたまたまですが、現地に滞在中、11月4日ですか、主な目的地の一つである西ネパールのスルケート郡のすぐ近くで大きな地震が起きて150人以上が亡くなるなど、かなりの被害も出た。本題に入る前に、まずそのことから伺えますか」
ダルマ 「はい。びっくりしました。当日、私たちはもうカトマンズに戻っていたので、現地での活動に直接の影響はなかったんですが、ソバの生産組合を立ち上げた地域の農家のなかには、被災した方たちもあったようなので、どうやって支援するか、2015年の大震災のときお世話になった富山の方々とも相談しながら、支援の準備しているところです。ただネパール側の事情もあって、もうちょっと時間がかかるかな…」

スルケート郡の農村の遠望

生産組合の村のソバ畑に向かう

開花中のソバの畑に立つダルマさん

鹿野  「それは大変でしたね。で、ソバの栽培のことですが、順調に進みそうですか」
ダルマ 「そうですね。スルケート郡を対象地にしたのは、スルケート郡を含むカルナリ州のある大臣が生産組合の組織化を支援してくれたこと、また近くに農業専門学校があることなどが直接の理由なんですが、もともとあの一帯はネパールでもかなり貧しい地域で、農業も技術的には遅れていた。
私が以前見に行ったときも、伝統的な農法が主で、それもおおくの畑の一部には雑草が生えてるみたいな状態でした。私の出身地なんかだとちょっと考えられない。といって出稼ぎのために働き手がいないからってわけでもないらしい。まあ、あの地方は人口密度も東ネパールに比べれば低いとか、もともと農業は自分達が食べるためのものが採れればいいっていうことだとか、いろいろ背景はあるんでしょうが。
で、化学肥料や農薬なんかもほとんど使われていなかった。でも最近はそれがかえってプラスになって、カルナリ州は今、ネパールのなかで有機農業の指定地区(オーガニックゾーン)になっている、なんていうこともあります。
栽培対象をソバに絞ったのは私の提案だったんですが、それは日本での食品製造会社と話をしていて、いま日本ではソバの原料はほとんどが輸入で、その大部分が中国から来ているって聞いたためです。で、輸入先を多様化するのも大事じゃないかっていう考え方が、最近は強くなっていますよね」

スルケート郡の現地側の責任者と意見交換するダルマさん

鹿野  「なるほど。それでスケジュール的にはどんな予定になっているんですか」
ダルマ 「今のところ、生産組合には約400軒の農家が参加していて、試験的な栽培は来年(2024年)の春から始めます。おもな目的は本格的な栽培を始める再来年(2025年)度用の種子を確保することで、今回は地域在来の種子だけでなく、日本からもすこし種子を持ち込みました。その結果を見て、本格的な栽培に結び付けるつもりです。
今回は農業機械、具体的には耕運機と収穫機、それに運搬用の機材なんかも現地に搬入しました。そういった機械は葉っぴーファームの現地法人(Happy Agro Farm)が日本から輸入して生産組合の農家に貸し出すことになります」
鹿野  「そういう機材の輸入にはかなりのタックスもかかるんですか」
ダルマ 「その点は、今のネパールでは農業機械の輸入のタックスは1パーセントだから、あまり問題にはなりません。乗用車だとタックスは200パーセントだから大変ですけど。むしろ機材の保守点検なんかが、問題になるかもしれない。現地の農家は機械なんかあまり使ったことはないし、故障したときに修理する技術や人材も充分ではないとか、やってみないとわからないことはいっぱいあります」
鹿野  「それはそうですよね。生産規模はどれくらいを見込んでいるんですか」
ダルマ 「将来的には、今はエゴマ栽培だけをしているシンドパルチョークやカブレパランチョークの生産組合にも広げて、年間2000トンくらいまでいくといいな、と思ってます。生産組合にとっても、エゴマだけに頼るというのは、いろんな意味でリスクもありますから。で、ソバは、最初は年間300トンくらいが目標ですね」
鹿野  「現地での買い取りと日本への輸出は、Happy Agro Farmがやるわけですね」
ダルマ 「はい。秋に収穫し、生産組合で乾燥までやってもらって、Happy Agro Farmが買い取り、輸出の手続きをして、翌年の春に日本の会社に納品するというのが、基本的なスケジュールです」
鹿野  「いずれにしても、これからはいろんな予期しないことも起きるかもしれないっていうことですね」
ダルマ 「はい、そうだと思います。でも、だから面白いとも言えますよね」
※写真はいずれもダルマさん提供
      
(聞き取りは2023年11月29日 、構成 鹿野勝彦)

          

(次回は1月16日掲載)

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