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山の日レポート

山の日レポート

山の日インタビュー

連載⑦ 東奔西走 ダルマ・ラマ 富山からネパールと日本、世界をつなぐ

2023.12.01

全国山の日協議会

第7回 加工場建設と株式会社設立

鹿野  「廃棄するものを減らすために、どんなことをしたんですか」
ダルマ 「最初にしたのは、大きさで規格外の品を、食品メーカーに買い取ってもらうことでした。メーカーはそれをパウダーとかペーストにして、いろいろな製品にする。それは今もやってますし、おかげさまで廃棄する量はずいぶん減りました。
でも、それくらいなら自分でもできそうな気がしてきた。もちろん多くの農家から品物を買い付けて大量生産するんなら別ですけど、自分の生産したもののうち出荷できない分を加工するだけなら、たいした設備もいらないし、ファームのそばに加工場を作れば、輸送のコストもかからないし、加工した品物は生ものと違って鮮度もそんなに問題にならないから、売れるまでしばらく置いておくこともできる。
もともと野菜は、たくさんできるとその分、値段も下がる。それは仕方ないんだけど、そのとき余ったものを自分で加工すれば、採算もとれるんじゃないかって思った」
鹿野  「で、ファームに隣接したところに加工場を作ったわけだ。それはいつごろで、実際には何を作ってるんですか」

加工場に立つダルマさん

ダルマ 「加工場を作ったのは2019年です。2020年にはそれとファームを一体化して経営するために、「株式会社葉っぴーFarm」を設立しました。最初の製品はなまの小松菜を袋詰めしたカット野菜や冷凍品、パウダー、ペーストなんかで、食品メーカーのほか、学校や施設の給食センターなんかがおもな対象です。
ほかに、最近ではネギやカブも作り始めたから、そういったものを加工することもやってます。とにかく畑のすぐ近くにあるし、農作業のあいまに作業もできるから、効率がいいし、コストもそんなにかからない。注文があれば小売りも配達もするし」
鹿野  「で、ダルマさんはその会社の代表取締役になった。そして本格的な6次産業化が始まったわけだ」
ダルマ 「はい。で、一番うれしかったのは、やっぱり農作物の廃棄量が減ったことですね。それから、販売をするようになると、それまで関係のなかった人たちとのおつきあいもどんどん広がる。葉っぴーFarmの場合は、主な納入先は学校とか施設とかですから、そういうところの人たちとか。それもうれしかった。
野菜つくりの作業だけだと、どうしてもいつも同じ顔ぶれの人たちとハウスにこもってる時間がほとんどで、それ以外の方たちとしゃべる機会があんまりない。
もちろん株式会社になった以上、ある程度の利益はあげないといけないし、経営者としては、従業員の確保や待遇のことも大事です。でも、もともともうけを大きくしたくて始めたわけじゃないし、それはいまでもそうです」

カット野菜の加工中

鹿野  「でも、結果的には、ファームの規模も、引き継いだときから比べるとだいぶ大きくなってますよね」
ダルマ 「そうですね。ハウスの数も倍くらいになったし、ハウス以外の農地でネギとかカブとかパクチーとかも作るようになったし。加工場ができたから、たとえば作物が短期的にちょっと取れすぎても、あわてて出荷先を探さなくても済むようになったし。ただ、規模拡大そのものが目的ではないです」
鹿野  「そういえば、そこにいくつか表彰状やトロフィーが飾ってあるけど、表彰とかもいろいろ受けてるみたいですね」

株式会社葉っぴーFarmへの表彰状

ダルマ 「これは僕がどうっていうより、荒木さんはじめ皆さんがサポートしてくれたから高い評価をされるようになって、その代表で僕がもらったんだと思う。だからちょっと恥ずかしいけど、そこに飾ることにしました」
鹿野  「でも一方で、むつかしいこともまだまだたくさんあるはずですよね。特に将来に向けて、心配っていうか、おおきな問題というか、課題はなんだと思ってますか」
ダルマ 「やっぱり、まず働いてくれる人の確保じゃないかと思ってます。それは、だいぶ先のことかもしれないけど、ファームそのものの持続性とも関係しますし。僕にも子供がいるけれど、彼らがファームを継ぐだろうなんてことは、考えていません。
いま、ファームで働いてくれているのは、荒木さんのころから働いている、近くに住んでいる女性のかたたちが大部分ですけれど、そのほとんどはかなり高齢です。その方たちがやめたら、補充はおそらくできない。
あとはネパールからの留学生が何人かアルバイトできているけれど、これも安定した労働力にはなりません。実際、コロナのときは、かなり大変でした」

カブを冷凍加工した製品

鹿野  「それはそうでしょうね」
ダルマ 「だからなにか新しいことを考えないといけない。日本全体でもそうでしょうが、そこまでは私には考えようがない。
で、これはあくまで私の場合っていうか、葉っぴーファームに限ってのことですが、今、考えているのはネパールの農村と手をつないでゆくことですね」 
鹿野  「では、そのことについて伺いましょうか」

(次回は12月16日掲載)

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