山の日レポート
通信員レポート
みちのくの高山植物(9)高山のイエローガーデン
2023.09.01
みちのくの山野草探報者「モウズイカ」さんからのレポート第9回です。
▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽
高山植物には黄色い花が多くあります。その代表として、今回はミヤマキンポウゲとシナノキンバイを取り上げてみます。
古い話で恐縮ですが、2017年7月8日、岩手県の焼石岳(1548m)に登った際のことです。
いつもなら焼石岳は岩手側の中沼から入るのですが、この日は秋田県の東成瀬村から入山しました。
前半は視界の効かないブナ林ばかりでしたが、八合目の焼石沼が近づいたら、突然、このような花風景が展開しました。
この場所を私は勝手に「焼石のイエローガーデン」と名付けました。
何故此処にイエローガーデンが出来たのか。
25年くらい前までこの場所は夏場、牛の放牧場になっていました。
牛はそこに生えている草たちを食べていますが、好き嫌いがあるようで、毒があるとか味が悪い、痛い棘がある植物は敬遠されるようです。
ミヤマキンポウゲは有毒植物なので食べ残され、結果として増えるのでしょう。
八幡平にもミヤマキンポウゲが多いですが、ここでは場所によっては、別の黄色い花が混じっていました。
上の八幡平の写真をご覧頂くと、上の方に大きめの濃い黄色の花が二個ほど混じっています。
これは別種のシナノキンバイです。
山を歩いていると、ミヤマキンポウゲとシナノキンバイを間違えて覚えている人によく会います。
どちらもキンポウゲ科で葉が裂け、花が黄色とよく似ていますが、いくつかポイントを覚えておくと簡単です。
花のサイズはシナノキンバイの方が大きめですが、実はあまり当てになりません。
栄養状態により、ミヤマキンポウゲもシナノキンバイと同じくらいの大きさで咲くことがあります。
ミヤマキンポウゲの花弁にはエナメルのような光沢がありますが、シナノキンバイにはそれがありません。
ミヤマキンポウゲの花を横や裏側から見ると、小さな緑色の萼(がく)があります。
ところがシナノキンバイの花を横や裏側から見ると、緑色の萼のようなものは無く、いきなり花弁から始まっています。
これは花弁ではなく、萼が花弁化したものなのです。
シナノキンバイの仲間の本当の花弁は退化して雄蕊(おしべ)のようになっています。
萼が花弁化するとは何事かと言われそうですが、キンポウゲ科の植物にはそれがやたらと多いです。
クレマチスやアネモネの仲間、オダマキ、トリカブト、クリスマスローズなどです。
ミヤマキンバイはバラ科、先の二種に較べると草丈が低く、20~30センチくらい。
花弁のかげに緑の萼があります。花弁は先端がくぼみ、葉は3枚の小葉からなります。
RELATED
関連記事など