山の日レポート
通信員レポート
ネパールにおける自動車道路の発達:その1
2023.07.01
会員丸尾祐治さんからのレポートです。
ネパールの地質の専門家である丸尾さんは半世紀を越えてネパール国内をくまなく歩いており、ネパールの道路の変遷を報告してくれました。
また丸尾さんは2021年6-7月「モザンビーク便り」を、「山の日」ホームページに5回にわたり投稿してくれました。
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私が最初にネパールを訪れた1969年秋時点では、自動車が走れる道路は、首都カトマンズ(図-1の赤点)と南のインド国境の街ラクソールを繋ぐトリブバン・ハイウェイ(図-1の空色点線)と北の中国国境に位置するコダリーとカトマンズの間を走るアーニコ・ハイウェイ(図-1の紫色点線)だけであった(カトマンズ盆地内の道路を除く)。コダリーの中国側の街であるザンム―からは、チベット自治区の州都ラサまでの自動車道路はあったものの、当時この国境では家畜以外の物資や人の行き来はほとんどなかった。そのためこの道路はエベレスト街道の始点である途中のラムサングとその近くの街バラビセまではバスが走っていたが、その先の道は閑散としていた。
一方、南側ラクソールには、支線とは言えインドの鉄道が乗り入れており、カトマンズやその周辺部で消費される大量の日用品の殆どはここから輸入されていた。そのため、途中標高2700mの峠を越える山岳道路はトラックの往来が非常に激しかった。ちなみに、1970年4月、私はネパールでの卒論のための地質調査を終えた後、岩石資料を詰めた11個の木箱と共に、空荷のトラックの荷台に乗ってこのハイウェイを下った。ラクソールで国境を越えて各種の乗り物を乗り継いで3日後に当時のカルカッタの港にたどり着いた思い出がある。
ネパールを2回目に訪れた1972年時点では、カトマンズ西方約150㎞にあるポカラと南のインド国境とを繋ぐシッダルタ・ハイウェイ(図―1緑色点線)や、国連が提唱するアジア・ハイウェイの一部であるマヘンドラ・ハイウェイ(図―1青色点線)の東半分が完成していた。続いて、1974年にはカトマンズとポカラを繋ぐプリティヴィ・ハイウェイ(図―1黄色点線)が完成したのを見届けた。
その後80年代、90年代、2000年代、2010年代と幾度となくネパールに通う度に、新たな山岳道路が建設され、あるいは既存の山岳道路が延伸し続けているのを人伝に聞かされていた。しかし、ネパールでは地図の作成・印刷が道路建設に追いついていないため、ネパールに行く度に手に入れる地図は自動車道路の図示が古く、満足に足るものではなかった。そこで、マイクロソフトのBingで検索して見つけたのが、図―1に示したネパールの最新の自動車道路地図である。これはネパール政府の道路局(Department of Road)が2021年に作成し、2023年3月24日にアップデートしたものである。
2022年10月、私は日本山岳会120周年記念事業である「グレート・ヒマラヤ・トラバース(GHT)」の2回目に参加した。10月6日の朝、日本からのGHTメンバー4名とカトマンズから参加するシェルパ・ガイド、コック、キッチンボーイ、ポーター併せて10名とミニバスに乗りカトマンズを立ち、一路タプレジュン(図-1茶色の点)に向かった。カトマンズからアーニコ・ハイウェイ沿いに東に向かい(図―1の紫色の点線)、デュリケルを過ぎた辺りで日本が建設したBPハイウェイに入る(図―1の黄土色点線)。途中クルコット・バザール(図―1の黒点)で昼食を取る。昼食後、BPハイウェイに沿って南に向かい、途中には1800年代に南から攻め入るイギリス軍に対してネパール軍がゲリラ戦法で善戦したとされるシンデュリガリ(シンデュリ城塞)を通り、マヘンドラ・ハイウェイに合流する(青色の点線)。このテライの平らなハイウェイを一路東進し、夕方遅くにコシ・ハイウェイとの合流点であるイタハリに到着し、ここで宿泊(薄青色の点)。
翌7日は早朝にイタハリを立ち、平坦なマヘンドラ・ハイウェイを一路東進する。インドとの国境付近で南北に走るメチ・ハイウェイに合流し、これに沿って北上し急坂を上り切ると、標高約1900mのイラムである。イラムはその東ダージリンと尾根続きの場所であり、お茶の産地である。ここで早めの昼食を取る。
昼食後、舗装されたメチ・ハイウェイを北上し、2ヶ所の川を渡って、暗くなるころ終点のタプレジュンに到着した。
タプレジュンは1984年に日本山岳会のカンチェンジュンガ縦走隊のキャラバンで、700人のポーターと一緒に通過した場所である。この時私はキャラバン担当であったため、イタハリのすぐ北にあるダーラン・バザールから7日間かけてタプレジュンに到着したが、他の多くの隊員はカトマンズから飛行機でタプレジュンに飛び、ここでキャラバンと合流しBCを目指したことが思い出される。
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