山の日レポート
通信員レポート
みちのく高山植物誌(5) 雪の子・ヒナザクラ
2023.07.01
みちのくの山野草探訪者「モウズイカ」さんからのレポート第5回です。
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ヒナザクラは、雪渓や雪田が後退した跡の斜面や平坦な湿地にこのように群生します。
白い小さな花のせいか、私はこの花を見ると、折角融けた雪がまた復活したのかと勘違いすることがあります。
冒頭でヒナザクラは東北地方の高山でよく見られると述べましたが、
この植物の分布はきっちり東北六県に限定されています。
奥羽山系では北は八甲田山から南は西吾妻山まで。
日本海側は鳥海山から朝日連峰までとなっており、
新潟県にも跨る飯豊連峰にはありません(代りにハクサンコザクラが産します)。
太平洋側、早池峰山でも欠如しています(代りに後述のヒメコザクラ)。
飯豊連峰より南、信越国境の山岳から北アルプス、白山にかけてはこの花「ハクサンコザクラ」が分布しています。
青森県岩木山の固有種として「ミチノクコザクラ」がありますが、花はやや大型です。
次の「エゾコザクラ」、日本では北海道にのみ見られますが、
国外では千島、オホーツク海沿岸、アラスカからカナダまで広く分布しているそうです。
今回はわざと学名を併記しておりますので、既にお気づきかと思いますが、
ハクサンコザクラ、ミチノクコザクラそしてエゾコザクラの三種は近縁で変種の間柄です。
以下は私の勝手な推理です。
かつて寒い時代にエゾコザクラが南に勢力を広げ、日本列島にも進出しました。
北海道ではエゾコザクラでしたが、本州ではミチノクコザクラとハクサンコザクラへと分化し、後に暖かくなって高山に残りました。
ところが東北地方では何故か真っ白い花のヒナザクラが現れ、多くの山に分布しています。
個人的には紅白どちらでもいいのですが、何故、このような配置分布になったのか、
また何故、紅白両方が混生しないのか不思議だなと思います。
一見「ヒナザクラ」に似ていますが、花はもっと小さく、ユキワリソウ亜属に分類されており、ヒナザクラとは系統が違うものだそうです。
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