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山の日レポート

山の日レポート

自然がライフワーク

西表島と私

2023.03.15

全国山の日協議会

文・写真提供 安間 繁樹

2021年7月26日、世界遺産委員会において、奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島の世界自然遺産登録が正式に決定した。
西表島は4つの島の中で、大きさは3番目だが、最も良い状態の森林が残されている島である。これは、大規模な開発が少なかったことや、自動車道路が海岸線に沿って1本作られたのみで、山中を横断する道路がないことも一因である。島のほぼ全域が国立公園に指定されており、これ以上の森林開発はないと考えらえる。

イリオモテヤマネコ。  島の生態系の頂点にいる動物だ (筆者 撮影)

西表島を目指す方々へ

ぜひ、西表島を訪ねて欲しい。ただ、気軽にトレッキングできるのは観光地になっているマリユドゥの滝とカンビレーの滝のみ。他は古見岳、テドウ山、横断山道にのみ踏み分け道がある。
それ以外は、ワンダーフォーゲル部や探検部による「探検」の世界だと心得てほしい。気楽に立ち入れるという場所ではない。
「ぜひ、山に入りたい」と思われることがあるかも知れない。その時は、十分な経験と技術を持った人の指導と同行を心がけてほしい。内陸部に関しては元々情報が少ないし、昔の山道は痕跡すらない。
山で危険な事は、滝の迂回の際の転落と沢での滑落だ。とくにこの事に留意しておこう。
真冬でも凍死することはない。日が暮れたら野宿する覚悟を持つことが、西表島の山を歩くコツである。


2021年、西表島が世界自然遺産に登録された。それ以降、「山に入れなくなるのでは」と危惧する人が地元にもいる。
規制、規制で森林を封鎖してしまうのではなく、多くの人が自然を享受できるような観察路や施設の整備と維持、入山に関するルール作り、旅人もそこに住む人たちも、心から喜べるような政策を進めて欲しい。
いつの世にも夢を持つ若者が生まれてくる。
探検を志す彼らにとって、西表島が魅力ある秘境として存在し続けることを願っている。


この魅力あふれる先島諸島に是非脚を伸ばしてみて下さい。

渓流域。ナメ床もあれば岩石帯もある。どこの沢でも安心して生水が飲める。

著者について

1944年中国内蒙古に生まれる。1963年清水東高等学校(静岡県)卒業。1967年早稲田大学法学部卒業。法学士。1970年早稲田大学教育学部理学科(生物専修)卒業。理学士。1979年東京大学大学院農学系研究科博士課程修了。農学博士。哺乳動物生態学専攻。世界自然保護連合種保存委員会(IUCN・SSC)ネコ専門家グループ委員。熱帯野鼠対策委員会常任委員。公益法人平岡環境科学研究所監事。日本山岳会会員。市川市民文化ユネスコ賞受賞(2004年)。秩父宮記念山岳賞受賞(2019年)
1960年代、イリオモテヤマネコの生態観察のため西表島に入る。その後、JICA専門家として16年にわたりボルネオ島で生活し、動物調査研究と若手研究者の育成に携わる。西表島とボルネオ島の自然と人々の営みを記録することをライフワークとしている。

私の観察場にて

西表島マナーブック 沖縄県

PDF:西表島マナーブック 沖縄県


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