閉じる

ホーム

  •   
  •   

閉じる

山の日レポート

山の日レポート

自然がライフワーク

【連載:西表島と私】その5 珍しい生き物 「固有の生き物が多い」

2022.06.01

全国山の日協議会

1)珍しい生き物

 「3メートルを超すヘビがいる」、「翼を広げると80センチになるコウモリがいて、群れでやって来る」と、私が話すと、「オーバーなことを言って・・・・」と、相手は笑う。しかし、これは本当の話。
前者はスジオ、後者はクビワオオコウモリである。
 なぜ、西表島には他府県では見られない生き物が多いのだろうか。これはトカラ海峡の成立が古く、そこを境にして生物相ががらりと入れ代わるからである。
 北は生物地理学的にいう旧北区(旧世界の北の地域)、南は東洋区(アジアの熱帯)に属している。さらに、琉球列島を南下するにつれて、熱帯の要素が増していく。少なくとも生物学の観点で見る限り、西表島は日本ではない。

クビワオオコウモリ。植物食のコウモリ。超音波を発する機能はなく、有視界飛行をする。

2)固有の生き物が多い

 自然豊かな西表島だが、哺乳類の種類は少ない。在来のものはイリオモテヤマネコ、イノシシ、クビワオオコウモリと、小形コウモリ3種だけである。
 哺乳類の種類が少ないという特異な条件があったからこそ、生態系でイリオモテヤマネコの上に位置する動物が存在せず、この島でイリオモテヤマネコが脈々と生き続けられたとも言える。ジャコウネズミ、クマネズミ、ドブネズミ、イエネコ、ヤギは、何らかの原因で侵入し、定住したものである。
 鳥類では、本州から八重山諸島に共通するものとしてハシブトガラス、スズメ、メジロ、シジュウカラ、ヒヨドリ、カワセミ、アオバズク、ツミ、バン、カルガモなどが知られている。
 カンムリワシ、キンバト、オオクイナ、ムラサキサギは八重山諸島か先島諸島を北限とする南方系の鳥類である。ただ、オオクイナは現在では沖縄島北部での棲息が確認されている。

リュウキュウカンムリワシ。若鳥は白い羽毛が多い。アジア熱帯に分布するカンムリワシの亜種とされてきたが、現在は独立種として扱っている。

PDF:6イリオモテヤマネコ

 集落内から島の一番高い所にまで分布しているのがヒヨドリ、次いでハシブトガラス。サンコウチョウ、トラツグミはもっぱら山中。キジバト、ズアカアオバト、カラスバトは林縁部に多い。
 カンムリワシもどちらかと言えば山麓部や林縁部で見かけることが多い。コノハズク、オオクイナの声は夜間、山中でも山麓部でも聞くことができる。

リュウキュウコノハズク。日本では奄美諸島以南に留鳥として棲息している。コノハズクの亜種とする考え方もある。

 爬虫類は24種。八重山諸島固有種の他、先島諸島固有種、奄美・沖縄諸島を含む琉球列島固有種、または台湾および中国との共通種に分けることができる。しかし、本州・四国・九州との共通種はいない。
 もっともふつうに見られるヘビは無毒のアカマダラである。平地や林縁部に多い。次はサキシマハブ。山中では水の少ない渓流にいるが、多くは山麓部や耕作地周辺で見られる。スジオ、サキシマアオヘビも平地のヘビである。

サキシママダラ。韓国、台湾、インドシナに分布するアカマダラの一亜種。西表島では最も普通に見られる無毒ヘビ。

 キシノウエトカゲは日本最大のトカゲで200グラムにもなる。カメレオンのような角張った顔をしているのはキノボリトカゲ。鮮やかなグリーン色の尾の長いトカゲはサキシマカナヘビである。
 カメは、セマルハコガメとヤエヤマイシガメが分布している。また、棲息種としては数えないが、アカウミガメなどウミガメ類が夏季、砂浜で産卵をする。

㊧キシノウエトカゲ。体重200グラムにもなる日本最大のトカゲ。4月から11月の間は、イリオモテヤマネコの重要な食べ物の一つになっている。㊨アカウミガメ。西表島では5月から8月の間、大きな浜の奥まった場所で産卵する。

 両生類は外来種を含めて10種が確認されている。
 西表島にはイモリ、サンショウウオの仲間はいない。すべて短尾類(カエル)である。水筒から水を注ぐかのようにコンコンコン・・・と鳴くのはヤエヤマハラブチガエル。夜間、高い音でピッ、ピッと単発的に鳴くのはアイフィンガーガエルである。リュウキュウカジカガエルはリッリッリッリィリィリィ・・・と高い声で連続して鳴く。一跳びで二メートルもジャンプするのはハナサキガエルである。
 河川、湖沼、田などに出現する魚をひとまとめに陸水性魚類と呼ぶ。西表島からは約360種が記録されている。ただ、西表島の河川は短く細いため、一生を同所で生活する純淡水魚はほとんどいない。

オオハナサキガエル。森林内の渓流に棲息する。2メートルもジャンプすることができる。 

 西表島の昆虫相は三つの特徴を持っている。
ここを北限とする南方系の種が多いこと、固有種が多いこと、それに渡り昆虫が多いことである。オオゴマダラはわが国最大の蝶で、林内をゆったり舞う姿は優雅の一言につきる。
 イワサキクサゼミはわが国最小のセミでサツマイモの葉、道沿いのススキにとまってジィーと鳴いている。タイワンヒグラシは日本最大のセミである。八重山では3月のイワサキクサゼミに始まって、11月のイワサキゼミまで1年のうち8ヵ月間もセミの声が聞かれる。

吸水するミカドアゲハ(3頭)とアオスジアゲハ(左から2番目)。渓流で普通に見られる蝶である。

八重山諸島には2種類のサソリが分布する。ヤエヤマサソリとマダラサソリである。両種とも全長3~6センチ、毒もそんなに強くない。タイワンサソリモドキはサソリと良く似ているが、尾が細く鞭状で毒針はない。しかし、全長10センチになり、2種類のサソリより大きく迫力がある。日中は森林内の石の下に潜んでいる。
オオジョロウグモは造網性のクモでは世界最大である。オオムカデは体長14センチにもなる。林床の落葉や朽ち木に潜んでいるが、夜間は樹上にも登る。キャンプの際、外に干した洗濯物や靴に入るので注意が必要だ。
その他、海岸の岩場やアダンの群落では巨大なヤシガニに遇う機会も多い。ヘビには希少種も多いが、他の生き物には結構遇う機会がある。それが西表島の魅力だ。

ヤシガニ。ヤドカリの一種だが、殻を被ることはない。最大1キログラムに達する。

RELATED

関連記事など