山の日レポート
通信員レポート
現地の産業と生活の紹介 ~モザンビーク便り 5~
2021.07.24
我々が井戸を掘っているあたりを歩いていると、時折収穫を終えたタバコの畑を目にする。自給自足農民が多いこのあたりでは、タバコは貴重な換金作物です。統計によると、モザンビークの葉タバコ生産量は、年間9万トン余りで、世界では12番目にランクされています(2019年度)。
村のタバコ集荷場で出会ったガルセイジャさん(46)に、当地でのタバコ栽培の話を聞いてみました。
このあたりでタバコ栽培が始まったのは、米国企業のMLT(Mozambique Leaf Tabaco)社が、2001年マンディンバ郊外に集荷・選別場を作って以来とのことです。
タバコ農家は、MLTとの契約で、各作付け面積に応じた「種と肥料」を支給され、収穫できた葉タバコから「種と肥料代」を差し引いた金額を受け取ることになります。
タバコは連作が出来ないとのことで、ガルセイジャさんは所有する農地(150x160m)を2つに分けて、主食のメイズ(とうもろこし)とタバコを年毎に交互に作付けしているようです。
この地域の雨季は、概ね11~3月頃ですが、タバコの栽培では9~10月に苗づくり(種撒)、12月頃に移植し、2月から4月にかけて随時葉を収穫し、乾燥させます。この間タバコの花が咲くと、直ちに摘花し、茎に指定された薬液を注入する等、結構手がかかるようです。同時期にメイズも作付け、収穫をしなければならず、凄く忙しいものの家族だけで対応しているとのことでした。
ほぼ同じ大きさで同質の葉を34枚重ねて1束とし、同様な束を集めて約50キロの塊りとします。概ね50kgの葉タバコを圧縮機で固めて、紐で縛って運び易くします。
ガルセイジャさんは、持ち込んだ葉タバコの荷造りを終え、ご機嫌でした。これから村で雇ったトラックで、マンディンバのMLT集荷場に運ばれ、そこで各自が持ち込んだ葉タバコは6段階のグレードが付けられます。彼の予想では、概ね2割程度がグレードI. II にランク付けされるとのことです。
会社の選別場では、50kgの塊り毎に等級が付けられるため、概ね同じグレードの葉タバコを束ねて一塊にするとのことで、右手に持つものがグレードの高い(良い)タバコで、左手はグレードの低いものとのこと、色の濃いもの程高いグレードになるようです。
さて、今年のガルセイジャさんの収穫ですが、天候に恵まれ上々の出来だったそうです。
6月30日にMLTの集荷・選別場に持ち込んだ乾燥葉タバコは、全部で1,592kgあり、売却額は11万メティカイス、「種・肥料代」を差し引いて、7万7千メティカイス(約13万円)の収入だったとのことでした。
さらにメイズも豊作で、食べ盛りの子供8人を含む家族10人分を残しても、収穫量の概ね半分程度は売ることが出来るとのこと、彼が終始上機嫌なことも頷けました。
写真をアップすると奥にドラム缶が二つ見えます。これは長男が仕込んだ「サトウキビを主原料とした酒」です。 アフリカの田舎では、バナナのビールやラクダの乳から作る酒等、家庭で醸造されたアルコール類が普通に出回っています。アフリカでもライセンスのない者が、アルコールを醸造するのは違法ではあるようですが、全く規制はされていないようです。
ガルセイジャの長男(19)彼は、早くから父親の手助けをし、良く働き、父親の信頼が厚く、サトウキビを主原料とした酒の醸造もして、家計も潤しているとのことでオートバイ(中国製約10万円)を購入したそうです。
彼が着ているジャージの左胸には、「奥田」の刺繍、背中には「OSAKA SAYAMA」 と入っていました。大阪狭山市の何らかのスポーツクラブで着用していた「奥田さんのジャージ」が、アフリカの片田舎まで巡って来ています。日本の中古衣料は、アフリカでは人気が高いようです。
2021.07.16 モザンビーク共和国 モンディンバにて
個人賛助会員 丸尾祐治
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