山の日レポート
通信員レポート
『森の国水の国 岐阜百秀山』刊行への想い
2021.07.09
岐阜県大垣市に在住の清水克宏さんのレポートです。
岐阜県は、槍ヶ岳、穂高岳、白山、御嶽山など名山霊峰、歴史豊かな低山、手つかずの自然を残す豪雪地帯の「道なき山」など、個性豊かで魅力的な山が集中する山岳県です。
しかし、残念ながら、県外だけでなく県民自身も岐阜県の山にあまり親しんでいないのが実情です。
例えば、「山の日」制定にあたっての総務省統計局の調査「都道府県別『登山・ハイキング』の行動者率」をみると、東京や大阪などの大都市圏とともに、山に囲まれた内陸県がもっとも高率になっています。
それにもかかわらず、岐阜県は内陸県の中で唯一行動者率が低く、県のキャッチコピーが「清流の国ぎふ」であることが象徴するように、中京や関西などの大都市圏に接していながら登山者誘致に必ずしも積極的ではないのが実情です。岐阜県の山を総合的に紹介した本も、45年あまり刊行されていません。
このように、岐阜の山が何かと日の当たらないのが残念で、私の人生を豊かなものにしてくれた山への恩返しの気持ちも込め、独力で岐阜の「佳(よ)き山」百を選定し、刊行したのが『森の国水の国 岐阜百秀山』(㈱ナカニシヤ出版)です。
岐阜県には454の山があるといわれますが、事前調査で約半数の215山を候補として絞り込み、情報が古くならないよう調査機関を5年に限定し、①標高、②山容、③眺望、④自然保全度、⑤人との関わりという観点から踏査しました。
期間内に眺望の確認と画像の確保のため好天を選んで踏査するため、単独行が136山、残雪期を狙うかヤブ漕ぎとなる「道なき山」が46山、追い込みの最終年は新型コロナウイルスの影響下での気の抜けない踏査となりました。
しかし、5年にわたる踏査を通じ、岐阜県の山は、森が豊かで、水に恵まれているなあと、改めてその魅力に感じ入り、タイトルに『森の国水の国』と付した次第です。
本書では、難易度、登山適期、登山道の整備状況、コースタイムなどを詳しく記すとともに、登山者以外にも山に親しんでもらえるよう、山名の由来、歴史、植生なども盛り込みました。
登山道や山小屋の整備された高山や、ハイキング気分で登れる低山のほか、17山の「道なき山」も収録されています。
これらの山は最初取りつきにくいかもしれませんが、日本の山に今ほど登山道が整備されたのはまだ最近のこと、地図、磁石、GPSを活用しながら自分なりのルートをたどると、登山の原風景が味わえ、山との距離がより近く感じられるのではないでしょうか。
地元山岳会に参加するのが「道なき山」への近道になります。
本書が県内外の皆さまに岐阜県の山に登っていただくきっかけとなれば、そして何かとさびしくなりがちな山里の方々に、「地元に佳き山あり」と誇りを持っていただく手がかりとなればと願っています。
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