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山の日からのお知らせ

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ネパール・中国で発生した大規模土石流災害 現地レポート 1

2026.09.01

全国山の日協議会

科学委員会委員 現在カトマンズに滞在中であるマハラジャン、ケシャブ・ラルさんのレポート

8月26日午前8時ころの出来事
7-8月のネパールはモンスーン期(雨期)の真っただ中で来る日も来る日もほぼ一日中雨が降る時期である。8月26日カトマンズ盆地は曇っていて朝から雨を降ったり止んだりさえない天気だった。雨そのものはそんなに強くはなかった。午前9時のニュースで中国と接しているラスワ郡の山奥の国境の町ラスワガディ(カトマンズより約125㎞北)は鉄砲水で流されたとながれた。この時期だから大雨で山間の被害だろうなとそんなに重く受け止めなかった。しかし、時間がおって流れてくるニュース、ユーチューブの投稿画像を見るとボテコシ川、トリスリ川流域の道路、橋、集落・町が流される大洪水の様子が次から次へとながれる。増水した川が濁流とともに橋、町を飲み込んでいく画像は想像を絶するもので私の中では東北での津波で川が逆流する画像と重なってしまった。このような現象は「内陸津波」ともいえると思った。この恐ろしい画像と共に世界中にこのニュースが広がり翌日から安否を気遣う世界中の友人・知人から連絡が入り、ことの重大性を新たに重く考えるようになった。というのも私がいるカトマンズ(盆地)は特段何もなく普通の雨期の日だった。政府も私と同じのようでその日は特段(救助等)の動きはなかった。
 
何が起こった?
8月26日ラスワ地方の天気予報は晴れのち雨で、前日に続いて雨はなかったようである。しかし9時前頃、突然鉄砲水が猛烈な勢いで流れてきた。画像ではその濁流が中国の国境検問所とぶつかり大きな波を作りあっという間にその雄々しい立派な建物、駐車中の数十台のバス・車などを飲み込み鉄砲水と流れた。
最初のニュースでは、同日午前8時37分に中国チベット吉隆県(Kyirong/Gyirong/Jilong-xian;ネパール語=ケルン)でM4・4の地震があり、その影響で同地域にある氷河湖の決壊で鉄砲水が発生し、まるで竜が山から飛び降りてきたようにすさましい勢いで流れてきて、その道にある全てのものを飲み込んだ。一説によると鉄砲水発生地(氷河湖)標高5140mからケルン国境地標高1800mまで、距離にして約20㎞を7分で流れた。単純計算1分で約3㎞(時速170㎞以上)のスピードで土石、雑木と一緒に標高差約3300m以上の落差を飛び降りたことになる。この大洪水による初期的被害でもすごいものがあったので中国側がネパール側にこのような氷河湖決壊、鉄砲水の情報提供をしなかったことはおかしい。情報があればネパール側では避難ができ、少なくとも人的被害はかなり防げると、一部メディアは批判的だった。
翌日、USGS(米国地質調査所)による発表ではその時その地域では地震がなかった。その代わり、そこにはM5.2の地震に匹敵する震度があった。それは、国境近辺にあるランタンリルン山の斜面で起きたとてつもない雪崩・岩盤崩れによるもので、落下の垂直距離は約1㎞その重さは4・4mt(メガトン)にもなると。めまいが出る数字でハッとおもった。なるほど地震はこのような想像絶する力で起きるものだと自分を納得させた。
また、在ネパール中国大使がこの大洪水の原因はネパール側におきた地震で、中国側がネパール側に情報提供しなかったという一部メディアの主張を否定する声明文を出した。しかし、地震の説はUSGSにより否定されているのでこの声明文は中国側に対するメディアの批判をかわす目的かもしれない。同大使は、今後は両国で情報を共有し対応する必要があるとし、そのようにしたいと述べた。
8月30日の時点でこの大災害の原因は一つではなく雪崩、岩盤崩れ、氷河湖形成・決壊、土石の堆積による自然ダム形成・決壊、鉄砲水などによる複合災害といえよう。この鉄砲水はラスワガディ~北部山間地から南部タライ平野地チトワンまで距離にして300㎞以上猛烈に流れていた。その際、川の水面は7-9mまで上がったと報告がある。つまり、鉄砲水が通った氾濫道・河川では9mまでの全てのもの(道路、橋、発電所、工場、建物、車、家畜、作物、樹木、人間等)を飲み込んだのである。山間部で飲み込まれたものは、死者も含め川の流れが緩やかになる平野部で多く見つかっている。公的発表では700名以上がなくなっており、2500名以上が行方不明で連絡がつかないのである。その内約500名は外国人である。この数はこれからかなり増えると思われる。在カトマンズ日本大使館によればその地方に行っているとされる日本人5名も連絡とれていない。
近年この道はカイラス山参拝に便利な道でもあるとされ、観光者、巡礼者も多いようである。また、中国との貿易ルートとしても急に発展整備された地域でもあり、倉庫が多く、荷物運ぶトラックなどが行き来する。養鶏、養豚、酪農、ニジマスの養殖、野菜生産でも有名な農業地域でもある。トリスリ川は水力発電には適した川のようでその流域には既に7か所以上に発電所があり790メガワットの電力が発電され国の電力需要の一端を担っているのである。一瞬にしてこれらが無になったのである。その被害額は相当なものになるに違いない。
現時点では、人命救助を優先に国を挙げて軍隊も導入し活動が行われている。昨日までは政府の方針で海外の救助隊は入れず自力で救助するとしていたが、米国、インド、中国、オーストラリア、日本など各国が自国民の安否も含め救助活動に参加できるよう圧力?(外交チャネル)で求めており、死者のDNAテストなど一部特殊作業において海外援助を受ける方針になったようである。しかし、インド軍は救助に深くかかわっているほか中国の救助隊も国境地域で活動を行っている。ネパール政府のこのような方針は人命救助を大事にすることから乖離しているともいえる。
ある発電所のトンネルから軍によって救助された人は「トンネルの中にはまだたくさんの従業員がいてその安否は気になる」と言っている。死者が安置されているところでは遠くから多くの人は自分らの家族・知人はいないかと必死になって探している。現地では冷凍施設などがなく、日がたつと腐敗が進み不衛生になるということで遺体は記録をとって森の中に埋めるようで、遺族によってDNAなどで確認されれば掘り出して渡すようである。
この災害でチベット側にも数名の死者や約500名の行方不明者がいるようである。首相・副首相などが現地訪問し国を挙げて救助体制を整えているようである。
日本でも最近千葉の大雨、洪水で都市型水害、数日前の石川富山の大雨・洪水による水害が続く。近年世界中このような水害・災害が多くなっていることは気になるのである。

2026年8月30日
マハラジャン、ケシャブ・ラル 
地域農林経済学会副会長

チベットとラスワの国境、ケルンの中国検問所の前と後

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