閉じる

ホーム

  •   
  •   

閉じる

山の日レポート

山の日レポート

通信員レポート

【登山道整備】石鎚弥山山頂から天狗岳を往復する登山者の実態と懸念点について

2023.06.29

全国山の日協議会

四国山岳ガイド協会 事務局 佐藤孝雄さん

はじめに

石鎚山は西日本の最高峰で日本百名山の一つに数えられる名峰です。そのため訪れる登山者の数も多く、石鎚山系ロングトレイルを構成する主峰でもあります。
一般的に石鎚登山と言えば石鎚神社の建つ弥山まででしたが、近年はその南東に派生した岩稜の先に鋭く聳え立った天狗岳を目指す登山者が増えてきました。弥山と天狗岳の間の登路は、弥山から岩場に設置された鎖を使って一旦下り、狭い岩稜沿いを歩きます。岩が傾斜を強め始めると登路は岩稜沿いか又は、その少し下を巻くように岩に足場と手がかりを求めて山頂の天狗岳まで歩くことになりますが、ここでスリップやバランスを崩すと南側又は北壁側に落ちることとなり重大事故に繋がります。
山は登山者の自己責任で登るべきものですが、一方で登山者の集中する山では、その登路上に危険個所があれば、何らかの安全対策が施されているのも事実です。天狗岳まで登った登山者のブログには怖かったといった記述が沢山出てきますし、現場で進退窮まり呆然と立ちすくむ登山者も見かけることがあります。

1. 懸念点について

従前の天狗岳までの登路は、南側斜面の岩と植生の堺沿いに求められていましたが、登山者の数が増えるにつれて、土と植生が南側へ徐々に後退する現象が見え始めたため、自然保護の観点から放置できないため、植生境に付けられた踏み後を通行禁止としました。その代替案として、岩沿いに歩くようにマーキングして誘導しているのが現状です。
ところが、岩稜には人工物がないため、安全に歩くためには岩登りの基礎技術が必要なのですが、実態としては技術のない人達も自由に行き来しているため、このままだと大きな事故の起こることが懸念されます。
注:天狗岳までは岩登り経験者や登山経験の豊富な人たちが登るコースでしたが、近年は登山初心者であっても行かれる方が多くなっています。

2. 現状確認のための調査

四国山岳ガイド協会から林野庁四国森林管理局計画保全課の牧尾課長にお願いし、合同で現地での調査確認を行うことを決定し、以下のとおり実施しました。
(1)調査日
・2022 年 10 月 4 日
(2)調査に参加したメンバー
・四国森林管理局計画保全課 牧尾幸之助 課長、山部洋士 係長
・四国山岳ガイド協会 石川善教 会長、松本智広 監事、佐藤孝雄 事務局長
・石鎚山頂小屋 人見義一 責任者
(3)調査概要
10 月 4 日 9 時に土小屋に集合し、11 時 40 分山頂小屋に到着。昼食後 12 時過ぎより天狗岳に向けて出発。危険個所と考えられる付近を観察しながら歩き、どのようにコースを設定すれば今よりも安全が確保されるか調査を行いました。結論には至っていませんが、現状の岩場を経験の浅い登山者が登ることが危険であるとの認識で一致しました。

天狗岳から弥山山頂方向 岩場を歩く登山者 ※赤線のラインは従前歩かれていたルートで現在は通行禁止

3. 対策及び課題

(1)天狗岳への入山規制
立札などによる注意喚起による規制は、実効性に乏しく効果は限定的となりそう。
(2)岩場に人口構造物を設置し安全を確保
北アルプスの岩稜コースに設置されたものと類似の鎖などを設置する。
・現実的な方法ですが、設置に費用が発生し、関係者との調整も必要。
(3)現状のまま放置
自己責任論に立てば放置も有りえますが、技術の無い登山者が行き来していることと、石鎚山系ロングトレイルを全国的に紹介し、来県者を増やす視点に立てば、危険個所の放置はどうなのか。

4. 解決に向けた方向性

石鎚山系連携事業協議会で議論し、安全対策が必要との認識で一致すれば、現場を所管する四国森林管理局に、対策要望の文書を発出する。

文責 四国山岳ガイド協会会長 石川善教

PDF:石鎚山調査報告書


2022年登山道整備事業

PDF:2022年登山道整備事業PDF


2021年登山道整備事業

PDF:2021年登山道整備事業PDF


RELATED

関連記事など