山の日レポート
通信員レポート
続・スプリング・エフェメラルの花筵(はなむしろ)
2023.04.10
略称で、スプエフェ『春植物』と呼ぶこともあるスプリング・エフェメラル Spring Ephemeral (『春の妖精』または『春のかげろう』) について、紹介します。 カタクリやイチゲの仲間、フクジュソウ、エンゴサク、アマナ、コバイモの仲間などのように春の限られた期間(雑木林の林床が明るいうち)にパッと現れ、パッと咲いて、パッと実を結び、パッと消える特異なライフスタイルをもつ小型の植物群を指します。 だからと言って一年草ではありません。 地上部が枯れた後も地下部分(地下茎や球根)は生き残り、翌年の早春に地上部を再生します。 従って、その生涯はけっして『はかない』というものではありません。 例えばカタクリに至っては、タネから花が咲くようになるまでには十年近い歳月を要するとも聞くし、更にはその後、何十年にもわたって咲き続けるということですから、へたをしたら他の草木以上に長命と言えるかもしれません。
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それでは前編の『キクザキイチゲ&カタクリ』以外のスプエフェ・アレンジメントを愉しんでみましょう。
キクザキイチゲとフクジュソウの組み合わせはよくあるようでいて、実はあまり見たことはありません。
どちらも秋田では豊富に生育しており、同じ場所で咲きますが、
開花時期にずれがあり、通常はフクジュソウが早く咲いてしまいます。
写真の場所は豪雪地帯なので、雪消えが遅く、両方が同じ開花となったようです。
PDFはアズマイチゲ(白)も混じっているものです。(クリックして見て下さい)
アズマイチゲはキクザキイチゲと姿形がそっくりなので、よく間違えられますが、
総苞葉(そうほうよう:花のすぐ下にある葉っぱ)の小葉が長楕円形で切れ込みが少ない点や柔らかい質感、
白い花弁のように見える萼(がく)の裏側がほのかに紅色を帯びている点などで区別します。
秋田ではキクザキの方が圧倒的に多く、アズマの方はやや稀のように思われていますが、有るところには有ります。
それこそ山ひとつがアズマだったというケースもありました。
そこにはフクジュソウやカタクリもほどよく群れて咲いていました。
左側の写真ではカタクリと共に
フクジュソウの両側に咲く白いイチゲは左がアズマ、右がキクザキが
右側の写真では、鮮やかな青紫のキクザキとカタクリが
共に咲いています。
北海道では、
ブルーの絨毯を敷き詰めたようなみごとなお花畑があると聞きますが、
その正体、主役はエゾエンゴサク?です。
(?を入れたのは、北東北に見られるこの種類をオトメエンゴサクと呼ぶ人も多いことからです。)
秋田や岩手ではエゾエンゴサク?の数はそれほど多くないので、どちらかと言えば、脇役に廻ることが多いものです。
ミチノクエンゴサクは積雪の多い日本海側の本州限定のようです。
花も葉もか細いその姿は、数多あるスプリング・エフェメラルの中でも最もはかない印象を与えように思います。
チューリップは日本には原産しませんが、それに割と近縁なのが、このキバナアマナです。
【キンポウゲ科】
イチリンソウ属 Anemone
キクザキイチリンソウ(キクザキイチゲ)、アズマイチゲ、
エゾイチゲ※、ユキワリイチゲ※、イチリンソウ※、ニリンソウ
フクジュソウ属 Adonis
フクジュソウ、ミチノクフクジュソウ、キタミフクジュソウ
セツブンソウ属 Shibateranthis セツブンソウ※
【ケシ科】
キケマン属 Corydalis
エゾエンゴサク、ヤマエンゴサク、ミチノクエンゴサク、
ジロボウエンゴサク※、
ミヤマキケマン、エゾキケマン※など
【セリ科】
セントウソウ属 Chamaele セントウソウ
【ナス科】
ハシリドコロ属 Scopolia ハシリドコロ
【レンプクソウ科】
レンプクソウ属 Adoxa レンプクソウ
【旧ユリ科】
カタクリ属 Erythroniun カタクリ
アマナ属 Tulipa
アマナ※、ヒロハノアマナ※
キバナノアマナ属 Gagea キバナノアマナ
バイモ属 Fritillaria
コシノコバイモ、カイコバイモ、ミノコバイモ、ホソバナコバイモ、
イズモコバイモ、アワコバイモなど/いずれも※
ネギ属 Allium ヒメニラ
(※は秋田や岩手など北東北には無い種類)
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