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山の日レポート

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通信員レポート

山の稲刈り

2022.10.18

全国山の日協議会

新潟県上越市の山奥で家族と共に小さな農業を営んで8年目になる鴫谷玉実さんからのレポートです。

第3回

9月半ばから始まった稲刈りが10月4日でようやく終わりました。こう書くと、どれだけたくさんお米を作っているのだろうかと思われるでしょう。我が家の経営面積はおよそ3ヘクタールで、そのうち1.8ヘクタールでお米を作っています。1.8ヘクタールというと上越の平野部で稲作をしている農家や農業法人がコンバインという収穫機械を使って半日で刈り取ってしまう面積なのですが、山の中に点在し、大きさも形も様々な田んぼでは、一日20アールから30アール程度の面積が刈れるくらいで、順調に刈り進んでも、約1週間かかる計算になります。

倒れてしまった稲をコンバインで刈る

さらに、我が家ではおよそ30アールで農薬を使わずに稲を栽培し、天日で干して乾燥させる稲架掛け米を作っています。山の上の田んぼで、バインダーという刈り取りと麻ひもでの結束をしてくれる機械を使って稲を刈り倒し、稲束を拾い集めて田んぼから運び出し、家の裏の稲架場まで運んで、稲架にかける。人がメインなこの作業は、疲れてくると、作業スピードも遅くなり、当然ながら刈り上げもずれこんできます。そのため、我が家では一ヶ月近く稲刈りが続きます。

バインダーでの稲刈り

移住してきた当初は自分たちの稲架場がなく、ご近所さんの立木を利用した稲架場を使わせてもらっていましたが、2年前に思い切って家の裏に稲架場を設置。我が家の他に村では稲架掛けをする人もいなくなりましたが、村の中の目立つところで稲架掛けをしていると、かつて稲架掛けをしていた村の人たちが、足を止め、「じき終わりそうかね」「良い稲になったなぁー」とニコニコ見て行きます。

稲架を組む

思えば、この稲架掛け一つとっても、村の人からどれだけのことを教えてもらったことでしょう。村の皆より格段に若くて力もあるはずの私が最上段の稲架にまで稲束を投げ上げられず、投げ方そのものを教えてもらったことから始まり、稲架にかける順番や、方角によって稲束をどう分けるかなどなど。たくさんの知恵と技術を惜しみなく教えてもらいました。今では、遊び仕事で稲を手渡してくれる子供たちに、さりげなく稲の手渡し方を教えて、戦力になってくれることを楽しみにしています。

稲を投げる

穂を踏んづけながら稲を渡そうとする子供たち

稲架場が稲でびっしり埋まると、ああ今年も刈りあげたなぁという実感がわきます。何段にも重なった稲を見上げて、稲架掛けの風景は美しいとしみじみ思います。掛けた直後の青味の残る稲が日を経るにつれ、落ち着いた黄金色に変わっていく様子をわが家から眺めるのも好きです。こうしてしばらく稲架にかけてお米を乾かし、脱穀のために稲を稲架から降ろし終わると、稲の緞帳の陰になっていた山々が新たな装いを見せてくれます。

今年も無事に稲架掛け終了!

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