山の日レポート
通信員レポート
見えないものには見えるものがある
2021.07.28
人と接触する場合、晴眼者の情報は、まず目から入ってきますが、視覚障碍者は耳から入ってきます。それは、見た目や形ではなく、言葉や感情表現から相手を見ているのだろうと思います。
さて、山ではどうでしょうか?山頂に立っても雄大な景色を見ることはできないし、果たして何が感動を呼ぶのか、見える者には分かりません。さらに自然の中には多くの危険が潜んでいますが、あえてその自然の中に足を踏み入れることにも驚かされます。見える自分には見えない人から勇気をもらえます。また、一緒に山に登っていると眼以外の五感が研ぎ澄まされていることに気づきます。
「六つ星山の会」は視覚障碍者と健常者が一緒に登山を楽しむことを目的とした山の会です。会員数は205名、視覚障害者67名、健常者138名(2020年12月末現在)で構成され、目の不自由な人と目の見える人が、お互いに補い合い、助け合いながら、和気あいあいと山登りを楽しんでいます。見えても見えなくても山は素晴らしい・・・頬をなでる風、身体を温める陽の光、梢のざわめきや草花の香り、山は都会の雑踏では感じられない自然の息吹を伝えてくれます。
活動の基本は「同等の立場」…これは障碍があろうとなかろうと人間は皆同じという意味です。視覚障碍者と登山をする際、晴眼者は目の代わりになってサポートしなければなりません。サポートは視覚障碍者1人を挟んで、前後2人で行います。前サポートは登山道の状況を都度言葉にして伝えます。後ろサポートは視覚障碍者の足元の情報を伝えます。視覚障碍者は、それらの情報をもとに自分の足でしっかり歩きます。晴眼者にとって大切なことは自分を上に置かないということです。
連れてってもらう、連れてってあげる、やってもらう、やってあげるという関係では、お互いの信頼感は生まれてきません。サポートは視覚障碍者登山のキーワード、サポートは日々の安全な登山活動を実践するための大事な要件、サポート体制と高齢化問題は永遠の課題…ですが、新しい時代には新しい形で、これからも山の素晴らしさを一緒に感じていきたいと思います。
「見えないものには見えるものがある・・・見えるものには見えないものがある」・・・山も人も素晴らしい。
六つ星山の会 星野善久
RELATED
関連記事など