
山の日レポート
通信員レポート「これでいいのか登山道」
【連載46】これでいいのか登山道
2026.08.05
本連載も46回目となりました。今回から日光ネイチャーガイドの宮地信良さんに、日光からの報告としてご寄稿を掲載させていただきます。第1回は「歩道維持活動元年」。歩道や施設の維持活動についての現場からのレポートを、ぜひご覧ください。
また、皆様が「山の道」について思うこと、考えることなども、ぜひ、ご寄稿くださいましたら幸いです(ご寄稿先メールアドレスは文末にあります)。
宮地信良(日光ネイチャーガイド)
「やったー!ぬかるみだった道がやっと通れるようになったぞ!」奥日光の戦場ヶ原に通じる歩道にできたいくつものぬかるみを解消しようと、作業に汗をかいたボランティアやガイドの間から歓声が沸き起こった。これは新しく立ち上がった環境保全団体「SF NIKKO(Sustainable Future Nikko)」の呼びかけに応じて2025年の5月、SFの会員を初め地元のガイドやボランティアが集まって、戦場ヶ原へ通じる歩道のぬかるみをなくそうと行った活動の日のことであった。
この道は林の中の仮設歩道なのだが、平らで水はけが悪い場所のため何か所も大きな水たまりとぬかるみができてしまい、それを避けるため歩道がどんどん広がって、ひどいところは幅が6メートルにもなっていた。修学旅行の小学生が大勢通るのだが、学校の中には靴が汚れるのを嫌ってハイキングを中止するところさえ出ていた。
見るに見かねたSF NIKKOはここを何とかしようと、国有林に作業の了解を取り、さらに近くのカラマツ林の切り出し時に出た樹皮を森林管理署から無料でもらい受け、これを麻などの袋に詰めて歩道に敷いてぬかるみを解消する方法を考えた。地元のガイドもこの歩道を毎日のように業務で使っており、何とかしたいという気持ちを同じように持っていたのでこの呼びかけにすぐさま応じ、総勢数十人で「ぬかるみ解消作業」を行ったのだった。日光でのこのような歩道の維持管理の活動は、環境省のパークボランティア以外にはこれまで経験がなかったものと思われる。

(左)このようなぬかるみが何か所も… (右)ぬかるみ解消作業後
同じ戦場ヶ原への歩道の付帯施設となっている休憩用の卓ベンチは、作られて数十年、おそらく一度も手入れがされておらず、見事なほど苔むした状態になり、気持ち悪がって誰にも利用されない状態だった。地元のガイドもこの卓ベンチのある歩道を毎日のように使わせてもらっていたので、「これは何とかしなければ」と考えていた。2025年の4月、地元のガイドの組織「日光自然ガイド連絡会」の呼びかけで傘下のガイドが集まり、スクレーパー、ブラシ、スコップ等、さまざまな道具を持ち寄って10基近いベンチ、卓ベンチの苔取りを行った。そして見違えるようなベンチに生まれ変わり、その後は多くの利用が見られるようになった。

(左)分厚く積もった苔をはがしてゆく (右)苔取り作業の成果!
アメリカの国立公園では歩道の維持管理のための体制がしっかりできており、この体制の下、国立公園内歩道の日常的な維持管理活動が行われている。またアメリカのロングトレイルの代表である「アパラチアン・トレイル」でも、当初から歩道の維持管理やマップの定期的更新が行われる体制が作られているという。
イギリスは歩くことが大変盛んな国であり、自治体が設定する「パブリック・フットパス」と呼ばれる歩道が張り巡らされている。そしてイギリスの代表的な環境保全団体であるBTCVが、この歩道の維持管理を行うボランティア等のためのマニュアル「Footpaths-a practical handbook」を発行して、技術面からのサポートを行っている。
日本では代表的なロングトレイルとして長野、新潟県境に「信越トレイル」がある。このトレイルには「信越トレイルクラブ」という組織が作られており、ボランティアを常時募集してトレイルの維持管理を行うという、わが国では画期的な体制ができている。

BTCVの技術マニュアル書
歩道は、登山道にしても探勝歩道にしても維持管理が決定的に重要なのは言を俟たない。上の例で見たように、本来は歩道をつくる時に維持管理体制を併せて作っておくことが理想なのだが、仮に体制ができたとしてもそれを動かしてゆくのは人の活動であり、地域で活動の実績を積み重ねてゆくことがとても大事だと思う。
岩手県早池峰山で「早池峰を携帯トイレの山に」という運動を行っている地元山の会の代表の方が発した「登山は本来趣味の活動であり、登山者は何でも行政に依存したり利便性や快適性ばかりを求めるのではなく、自らを律するべきだ。」という言葉は、私の胸に突き刺さるものであった。ガイドとして日光の歩道を利用している私も「中身」を充実させて行く努力を積み重ねながら、日光で始まった「入れ物」つくりにもかかわってゆきたいと考えている。
登山道法研究会では、これまでに2冊の報告書を刊行しています。こちらは本サイトの電子ブックコーナーで、無料でお読み頂けます。
https://yamanohi.net/ebooklist.php
また、第2集報告書『めざそう、みんなの「山の道」-私たちにできることは何か-』につきましては、紙の報告書をご希望の方に実費頒布しております。
ご希望の方は「これでいいのか登山道第2集入手希望」として、住所、氏名、電話番号を記載のうえ、郵便またはメールにてお申し込みください。
●申込先=〒123-0852 東京都足立区関原三丁目25-3 久保田賢次
●メール=gama331202@gmail.com
●頒布価格=実費1000円+送料(430円)
※振込先は報告書送付時にお知らせいたします。
報告書の頒布は、以下のグーグルフォームからも簡単にお申込み頂けます。
報告書申し込みフォーム
先に刊行致しました「第1集報告書」は在庫がございませんが、ほぼ同内容のものが、山と渓谷社「ヤマケイ新書」として刊行されています。
ヤマケイ新書 これでいいのか登山道 現状と課題 | 山と溪谷社 (yamakei.co.jp)
また、このコーナーでも、全国各地で登山道整備に汗を流している方々のご寄稿なども掲載できればと思います。
この記事をご覧の皆さまで、登山道の課題に関心をお持ちの方々のご意見や投稿も募集しますので、ぜひご意見、ご感想をお寄せください。
送り先=gama331202@gmail.com 登山道法研究会広報担当、久保田まで
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