山に囲まれ、山と向き合い、人との輪を広げる

公益社団法人日本山岳会 山梨支部長 北原孝浩

「西に甲斐駒、北に八ヶ岳、東に茅(ヶ岳)・瑞牆(山)、南に遥か富士の山」――私の住む山梨県北杜市の市民歌「北の杜讃歌」で唄われているように、山梨県は何どこでも四方を山々に囲まれ、山懐に抱かれている。富士山、北岳、間ノ岳は最高峰、2位、3位の山々である。

1997(平成9)年、国に先駆けて8月8日を「やまなし山の日」と定めた。県土の約8割が森林で、山や森林を見詰め直し、その恩恵に改めて感謝する契機にしようとした。「山に親しみ、山に学び、山と生きる」をスローガンに、山梨県が独自に制定した「山の日」である。制定は全国でも早い方だ。この「やまなし山の日」には、いくつかのイベントが行なわれたが、親子チャレンジ登山(親子登山)は、県内の山岳会が結束して参加してきた。

我が山梨支部は2005年から14年までの10年間、「山を知ろう、山へ行こう」をスローガンに、毎年欠かさず「山の博覧会」を開催した。スタート年は日本山岳会創立百周年に当たっており、登山の普及と山岳文化の継承を図る目的で実施した。それぞれの分野で著名な方々を講師に迎えての講演会で、登山や自然、山の歴史・文化に関心ある参加者は、毎回数百人を超えて盛会だった。日本山岳会は2012年に公益法人へ移行したが、その際には公益事業の優れたモデルの一つとして話題になった。

2015年8月11日、国民の祝日「山の日」がスタートした。
山梨支部では制定記念事業として同年9月に「やまなし登山基礎講座」を企画、開講したが、今年度はその6回目である。登山経験の浅い初級者や、登山の基礎を学びたいという中級者を対象として、30名程度の受講生を募った。

前5回までの受講生は中級者と思われる方々が多かった。山に登ってはいるが山岳会に属さず、独自に山を楽しんできた人が大半で、この講座を通じて登山の基礎を学びたいという。「山の博覧会」は講演を聞くことであったが、この講座では受講生が《学び、それを実践につなげる》場として計画した。

講座は9月から11月にかけて毎週開かれる。安全登山、装備、 山の天気、地図の読み方、自然保護、山の救急医療、山の文学、山梨登山史、山岳写真、山岳遭難とその対策などの机上講座に加え、ロープワークとセルフレスキュー、地図読みなど3回の実践登山も行なわれる。県警本部による「山岳遭難講座」以外はすべて山梨支部員が講師を務めており、好評を博している。

地元の山梨学院に大変お世話になった。「山の博覧会」ではホールの提供と講師料の大半を同学院に負担していただいた。「登山基礎講座」でも最新設備の教室の無償提供、案内チラシの印刷発送、受講申し込み受付などの募集事務、さらに受講生に配布するレジュメの印刷など、同学院生涯学習センターの全面的なご支援を得た。 ありがたい環境の下での講座である。今年度(開講中)は、山梨学院大学スポーツ科学部のご協力もいただいた。

受講生には講座終了後、支部山行への参加を勧め、講座で学んだことを復習実践する機会を提供する。そして、山岳愛好者として互いに学び、山を楽しむ輪を広げ、それが会員増につながれば幸いである。

※この文章は著者である公益社団法人日本山岳会山梨支部長の北原孝浩さんのご承認により、 日本山岳会会報「山」2020年10月号より転載させていただきました。
https://jac1.or.jp/document/yama_back_number

今年度6回目を数える「やまなし登山基礎講座」